「蘭ウェで笑って」:高校生モデルと高校生デザイナーのプロの舞台での本気の勝負

Posted at 18/01/02




暮れから正月にかけて読んだ作品の感想、二作目。

猪ノ谷言葉「ランウェイで笑って」1〜2巻。

これは週刊少年マガジン連載。身長158センチでスーパーモデルを目指す藤戸千雪(ちゆき)と妹たちを抱え貧しい暮らしの中でファッションデザイナーを目指す都村育人、二人の高校三年生の物語。

少年マンガであるだけに無理ありまくりな設定なのだが、こんなことが本当に起こったらいいなということが描かれているのがいいなという感じがする。基本的に女の方が気が強く男がヘタレという最近にありがちなパターンなのだが、実は割と運命を変える主導権を握っているのは育人の方かもしれないという感じもまた面白い。まあデザイナーとモデルでデザイナーが主導権を握るのはある意味当たり前なのだけど。

これは「ブルーピリオド」でもそうだけど、超人的な努力をするのがある意味当たり前の前提になっていて、その辺が昔の悩みながら挫折しながら前に進んでいく物語と違うという感じはしなくはない。まあ少年誌だから、ということもあるが。

ファッションというキラキラした世界を描くことと、そこにある意味不似合いな泥臭い努力。天分はなくても壁は超えられるんだというメッセージはある意味残酷ではあるが、しかし古いものが何もかも変わっていく現代において、そんな奇跡が絶対に起こらないとは言い切れない、そんなことも思わせる。

我々庶民の日常からかけ離れたキラキラした世界を描くというと、私は「NANA」を思い出すのだが、バンドの世界はある意味十代だろうがなんだろうが才能さえあればのし上がっていけるという前例に溢れているのでそれなりの説得力はある。

「NANA」の世界のリアリティはむしろ傷つけあう人間の真実みたいな部分にあって、バンドのメンバーが破滅的であればあるほどリアリティがあるという倒錯があるが、こうした少年マンガがキラキラした世界を描くと生まれ持った才能とそれを実行する楽しさ、泥臭い努力だけでなく天から降ってきた幸運みたいなものが伴わないとリアリティが生まれないわけで、そこに物語が成立するギリギリのものがある。

ここでは158センチの千雪がモデル派遣会社の社長の娘で、彼女と彼女の衣装を作る貧乏な育人が高校の同級生という設定になっていて、そういう意味では小学校の段階から私立に通わせる階層と公立のみで上がって行く階層が同じ高校で出会うというある意味での不自然さがある。設定で最大の不自然さを感じるのはそこなのだが、まだこの設定が受け入れられるくらいには日本は平等なのかもしれないとは思う。

いずれにしてもこの作品はまだ読み込みが足りないので面白さを完全には掴めてないだろうなと思う。その辺りが自分で掴めたと思ったらまた取り上げたいと思う。

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by Luke Peterson

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