『聲の形』:いじめのエスカレートしていく背徳のドライブ感と乾いた哀しみ/『とりかえ・ばや』:スリリングな男女入れ替え劇/葉山でロシア・アヴァンギャルドのポスターを見る

Posted at 13/12/15

【『聲の形』:いじめのエスカレートしていく背徳のドライブ感と乾いた哀しみ】

聲の形(1) (少年マガジンコミックス)
大今良時
講談社

昨日上京の間に、読めてなかったマンガを二冊読んだ。大今良時『聲の形』1巻とさいとうちほ『とりかえ・ばや』1巻。どちらもいろいろなところで話題になっている作品だが、買ったはいいものの食指が伸びず、1週間以上放置していたのだが、ようやく電車の中という状況で読むことができた。

『聲の形』はハードな話。いかネタバレと言えばネタバレだが、ネタバレだと台無しになるとかそういう次元の作品ではない。6年生のお調子者の男子が聴覚障害者の女の子を純粋な興味と退屈しのぎからちょっかいを出していくうちにどんどんエスカレートし、ハードないじめになってしまう。そのブレーキの利かなさが凄い。子どもというものはこういうものかもしれないなと思う。そしてそれが公に大問題になると、今度は彼自身がものすごいいじめの対象になる。彼女は転校してしまい、残った男子は一人ぼっちのまま高校3年になり、ついに死を決意して最後に彼女に会いに行く。

第1巻はここまで。彼がどういう気持ちで会いに行ったのか、そして訪ねてこられた女子はどう感じたのか。これは分からないし、果たして第2巻には何が書かれているのか、怖いような読みたいような展開。この作品が掲載された雑誌があっという間に店頭から消えたというエピソードがあるのだが、いじめという問題の人の心に占める大きさが反映されているのだろう。いじめる方の問題、いじめられる方の思い、周りの大人たち、未熟な表現しかできない子ども、エスカレートしていく背徳のドライブ感と乾いた哀しみ。自分の学校時代にはそう深刻ないじめもなかったし、教員をやってる時もこちらが感じるような問題はなかったのだけど、ここに描かれている教師たちの子どもから信頼されてない感というものは、何とも突き刺さるものがある。これを読む限りでは、いじめというのも教室内外のしつけの問題は大きいのだなあと思う。


【『とりかえ・ばや』:スリリングな男女入れ替え劇】

とりかえ・ばや 1 (フラワーコミックスアルファ)
さいとうちほ
小学館

『とりかえ・ばや』。これは同名の古典、「とりかえばや物語」のマンガ化。Wikipediaを読んだ限りでは、結構忠実にマンガ化されているようだ。沙羅双樹の若君(女)が若き侍従として宮中で活躍し、睡蓮の姫君(男)は沙羅双樹の参謀みたいな感じでいろいろアドバイスしているのが面白い。それを取りまく周りの人間模様は平安期文学お約束のどろどろした世界で、そのあたりもうまく表現されているように感じた。しかし、何というか現代小説にしても通じるようなスリリングな場面が多く、自分がイメージしていたものとかなり違った。今日書店で調べてみたら3巻まで出ていることが分かり、購入したが、それはこれから読むことにする。睡蓮のキャラがまだ十分活躍していないので、先を読むのが楽しみだ。


【葉山でロシア・アヴァンギャルドのポスターを見る】

今日は朝から神奈川県立美術館・葉山館へツイッターで見つけた『松本瑠樹コレクション ユートピアを求めて:ポスターに見るロシア・アヴァンギャルドとソヴィエト・モダニズム』展を見に行った。松本瑠樹はDCブランド「BA-TSU」のデザイナーであり創業者であった人だという。個人でこれだけのポスターをコレクションできるのかと唖然とする枚数だった。ロシア・アヴァンギャルドのポスターというのはアールデコ的でもあり、未来派的でもあり、1920年代の世界的な傾向の一環は感じるのだけど、やはりほかのどこにもない「ロシア・アヴァンギャルド」でしかないと感じさせる作品が多く、面白かった。ロシア・アヴァンギャルドは革命の成功からスターリン独裁の確立まで、年代で言えば1917-30というごく短い命の中で、戦時共産主義・新経済政策(NEP)・五か年計画へと展開していく中でポスターやスローガンの表現もどんどんニュアンスが変わって行って、実に芸術と政治が不可分の時代という感じがした。

個人的にはエイゼンシュタインの『戦艦ポチョムキン』のあの有名なポスターの現物が見られたのが一番うれしかった。自分でオリジナルカードをつくれる企画があって、これも楽しめた。

美術館の外も海がきれいで富士山が見え、海岸の見えない彼方に葉山の御用邸があるということだった。都心からは少し遠いが、バスに乗る時間を含めても銀座から片道1時間半なので、ちょっとした気分転換にはいいかもしれない。

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Title background photography
by Luke Peterson

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