まだ山は夏/『銀のうでのオットー』都物語が生きのびるということ/ホリエモンのお勧め本/『進撃の巨人』とテレビの力

Posted at 13/09/11

【まだ山は夏】

だいぶ秋めいては来たけれども、まだまだ夏の名残りが残っている。今朝、草を刈りに山に入ったが、やはりまだ夏の山だなと思った。日によって、草の勢いが落ちていると感じるときもあるのだけど、今朝はまだまだ強いと思った。隣の家の人と話をしていたら、近くの家の壁に雀蜂の巣が出来ていたらしく、市に連絡したら業者が来て落としてくれたと言っていた。まだ蜂が出る時期だ。

私が草を刈っていても、先週、アザミが咲いていて蜂が出て進めなかった道は、もうそのアザミは枯れていたのにまだ蜂がいた。仕方なくまた別の道や畑を刈ってみたのだが、道の真ん中に笹竹が生えていたり、けっこう手間のかかるところが多い。誰がいつ捨てて行ったのか分からないが、空き缶がいくつか落ちていたり、まあ家のまわりや畑や山の環境管理というものはそれだけで大きな仕事だなと思う。直接お金になるわけではないからなかなか手が回らないのだが、人に任せられるところは任せるにしてもときどきはこういうこともするといいと思った。


【『銀のうでのオットー』と物語が生きのびるということ】

銀のうでのオットー (子どもの文学―青い海シリーズ)
パイル
童話館出版

月曜日に買った『銀のうでのオットー』を読了。とても気品のある、素晴らしい話だった。中世ドイツの略奪をこととするようなろくに領地のないあらくれ貴族=泥棒男爵と修道院で教育を受けた聡明な男の子の話だが、荒くれの騎士たちのやり取りや城の中での会話など、とてもよかった。城砦の感じが『進撃の巨人』を思わせ、出撃の時に鐘が鳴り響くところなど調査兵団が壁外遠征に出かける感じだなと思った。また男の子が男爵と敵対する領主にとらえられ、酷い目にあわされるのだが、それをその領主の娘に助けられるところなどはやはり『進撃の巨人』のノベライズ、「Before the fall」に出て来る「巨人の子」キュクロが商人の娘シャルルに助けられる場面を思い出させた。もちろんパイルが書いたような中世を主題にした小説の方が『進撃の巨人』の原典になっているのだろうけど、このようにして新しいいのちを与えられながら物語は生き伸びて行くのだなと思った。

【ホリエモンのお勧め本】

ネットがつながらなかったので仕方なく本を1000冊読んで考えた そしたら意外に役立った (ノンフィクション単行本)
堀江貴文
角川書店

堀江貴文『ネットがつながらなかったので仕方なく本を1000冊読んで考えた』も読了。この本はそんなに期待していたわけではないのだけど、思ったよりずっと面白かった。そして、自分にとってなんだか分かりにくい人だなと思っていた堀江という人が少しわかった気がした。

この人は、基本的に「ふまじめ」なのだ。そして強気というか、常にがんがん行きたいタイプなのだ。で、基本的に嫌い、というか抑圧したくなるのが「まじめで怖がり」なタイプなのだ。原発事故関連のところを読んでいると、東京には影響はなかった、と言いきっている。そして、低線量放射能の恐怖とかに囚われている人や、原発廃止を訴える人たちを強く否定している。

まあ彼の主張にも「まあそうだな」と思うところも「それはどうかな」と思うところもあるのだが、彼の基本的なスタンスと彼が嫌われる理由というのは少しわかった気がした。日本では、「まじめで怖がり」な人が「良識派」とされているのだ。だから基本的に堀江のような「ふまじめで強気」な人は反良識派とされやすいし、また彼の商売敵や彼の起こしそうな変化に抵抗しようとする人たちは良識派の恐怖と嫌悪を利用しやすいのだ。そして彼は自分がやってることのどこが悪いのかと思っているからそういう人たちのたくらみやひっかけに対して全く無防備で、あっという間に絡め取られてしまい、服役までするはめになった。しかしそれでも全然めげずにこういう本を出したりするところがまた堀江という人らしい。まわりもまた同じ伝ではめることもできないだろうからまだしばらくの間は、堀江はずっと影響力を持ち続けるだろうと思う。今のところ、服役も彼のある種のカリスマ性を高めるだけに終わっているのは彼がある意味での「革命家」であり、その箔を高めたという感じになっている。まさか意図したわけではないだろうけど。

内容的にはいろいろな本を紹介しているのだけど、やはり彼の専門に近いところが新鮮な話が多かった。また私があまり読まないエンターテイメント系の小説でへえと思うのがいくつかあった。

私は自分があまりそうでないのでちゃんと認識してなかったのだが、彼は基本的には「もてること、飲み食いすること、自慢すること」が好きなあぶらギッシュな男らしく、そういう系統のエピソードがけっこう出てきたのがへえっと思った。特に面白かったのがぺパボの家入一真の本の紹介で家入本人と会った時の話なのだが、堀江は家入の会社のM&Aの交渉をするのに恵比寿のカラオケ屋に女の子を一杯呼んで接待したらどん引きされたのだそうだ。家入はシャイでおたくで女性には疎い好青年だったのだそうだ。(いまはどうもそうでもなさそうだが)そんな「子供の誕生の瞬間、過ぎていく一日一日を一番近くで見ていたい」というようなことが起業動機だった人でも十分成功を勝ち取れる、そういう時代なんだ、という話が面白かった。

小説では江戸時代に暦を改定した囲碁棋士の渋川春海を描いた冲方丁『天地明察』や、田沼意次を描いた高任和夫『青雲の梯』などがへえっと思った。あとは獄中関連として丸山友岐子『スーパー死刑囚伝』なんてのも珍しいものとしてはあったな。花輪和一『刑務所の中』なら私も読んだのだが、それは紹介されてなかったし、まあ彼の趣味でもないんだろう。徳洲会病院を数々つくった徳田虎雄の伝記本も面白そうだった。

基本的にこの人は常に言いたいことがはっきりしすぎていてなんだか私などにはそういうところがめんどくさく感じる(自分が考えていることの邪魔に感じてしまうので)のだが、言いたいことを言いたいのに誰も聞いてくれないという不満をこじらせているような人たちにとってはまさにヒーローみたいなものなんじゃないかなという気がする。なにしろいきなり「この現代でやりたいことがやれないなんて言ってる人は自分は情弱だと言ってるようなものだ」なんて挑発から始まっているわけだから、読んで小躍りする人もあればその時点で本を閉じてしまう人もあるに違いない。まあそういうところはとりあえず生あたたかく通り過ぎることができれば、書いてあることはけっこう面白い。自分が知らないことはそんなにはなかったし、知らなくても興味が持てないところ(特に医療工学のところ)もけっこうあったのだが、そういう部分も堀江という人の関心を大きく動かす部分なのだと思えばそうい意味で現代的には意味があるんだなあとは思える。そういう感じで、やっぱりこの人は好き嫌いはともかく、面白い人ではあるんだなあと思った。


【『進撃の巨人』とテレビの力】

PASH!(パッシュ) 2013年 10月号 [雑誌]
主婦と生活社

最近どうも疲れが出ているのと(夏の疲れだろう)根本的に生き方をいろいろ考えているせいもあって考え方をまとめながら何となく時間が過ぎて行ってしまうときがけっこうある。そんなことをしているうちにマックのアップルパイがどうしても食べたくなって、車で出かけた。アップルパイをコーヒーで食べてからはす向かいの書店に行って本を見ていたら『ビックコミック』が発売になっていて、それからアニメ雑誌を見たら『パッシュ!』と『オトメディア』が『進撃の巨人』が表紙になっていたのでちょっと迷ったが買った。『進撃の巨人』が扱われていると欲しいとは思いつつちょっと買い過ぎかなという思いもあって、少し逡巡したのだが、しかしこのアニメも9月いっぱいで終わるし、そうしたらもう特集が組まれることもあまりないだろうと思って買うことにしたのだ。

OTOMEDIA (オトメディア) 2013年 10月号 [雑誌]
学研マーケティング

そんなふうに考えてみると、原作の単行本が累計23,000,000部とか言ってもやはりキー局でない局でのアニメの放送に敵わないんだなというふうにも思う。そう考えてみると、出版が衰退した衰退したと言われるのでどうも既存のメディア全体が衰退しているような気がするけれども、出版はだめになってきていてもテレビは相変わらず強いんだなと再認識した。文字から動画へという流れはネットでもはっきりしてきているけれども、ネットで語られる話題の多くがテレビで取り上げられたことだとよく言われるということからも、やはりいまだにもっとも影響力が強いメディアはテレビなのだ、いまさらながら、と思った。

『オトメディア』も『パッシュ!』も腐女子向けなのか、特に『オトメディア』は「熟れごろ男子を召し上げれ(はあと)」的なノリに辟易はするのだけど、基本的に目当てはインタビューだ。どちらも声優への取材もあるがプロデューサーや構成担当、別冊マガジンの編集者へのインタビューも雑誌ごとに工夫して、雑誌ごと、あるいはDVDの付録とあまり重ならない内容を答えていて、読みがいはある。

このアニメは2クール、つまり半年間続いたが、内容としてはほぼ単行本8巻までなので、現在12巻になるであろうところが連載されているからもう少ししたら1クール分の原作が出来ることになる。もちろんすぐにというわけにはいかないだろうけど、是非第2期、第3期という形でまたアニメ化をしてもらえればなあと思う。これだけの世界の広がりのある作品は、なかなか出て来ないと思う。

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by Luke Peterson

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