美しさというものがいかに大事か

Posted at 11/10/30

何か日常雑記という感じだけど、昨夜は6時半まで仕事をしてそのあと上京。特急の中では弁当を食べたり、鈴木敏夫『ジブリの哲学』(岩波書店、2011)を読んだり。どうも団体客が乗っているらしく、いつもはそんなにこんでいないのに昨日は窓側の席が取れなかった。添乗員らしき人が回覧板用のバインダーみたいなものに挟んだ名簿を持って何度か往復していた。最近、特急の中では手持ち無沙汰なことが多いのだけど、昨日は本のおかげであまり退屈しなかった。

ジブリの哲学――変わるものと変わらないもの
鈴木敏夫
岩波書店

まだ読み終わってないけど、宮崎駿という天才にして変人とどう付き合ってきたか、プロデューサーとしてジブリの製作をどう支えてきたかというのが感じられて面白い。宮崎に関しては今までも本人の著書を含めてたくさん読んでいるので「なるほど、周りから見たらこんな感じなんだな」というのが分かって面白かったのだけど、一番印象に残ったのは『アニメージュ』を創刊するときの話。尾形英夫という豪傑型の編集者に一ヵ月後の発売のきまった雑誌を白紙で任される、というちょっと考えがたい話。編集方針は、「自分の息子がアニメ好きだから高級な本にして頭のいい子が読む雑誌にしろ」というもの。アニメに詳しい女子高生に来てもらって話を聞いてそれで特集をキャラクター特集にして、「頭のいい子」が読んで面白いように、関係者には「本当のこと」を語ってもらう雑誌にしたのだという。鈴木は尾形を振り返ってプロデューサーには「火付け役」の資質が必要だということ、仕事は公私混同でやること、他人に頼んだらすべてを任せること、を学んだのだという。これは後の鈴木の仕事の仕方を考えると面白いなと思った。

帰りに駅前の書店によって本を少し見たが買わなかった。ジョブズの伝記もあれば買おうという気がないわけではないのだが、売り切れてるのかな。大きい書店なら多分あるんだろう。最近iPhoneでYouTubeを見て、というより聴いていることが多いのだが、昨日はずっと『残酷な天使のテーゼ』を繰り返して聴いていた。この曲、やはりサウンドがいいし、歌詞も聴いているうちにストーリーの中のどの役割を果たすのかもだんだん見えてくる。途中で見るのを挫折しているので断片的に時々読むようなことから頭の中でストーリーが組みあがってきていて、多分こういうことなんだろうなという感じになっているので、あんまりへんな理解をしないうちにちゃんと通してみたほうがいいかもしれない。

帰宅後はあまりテレビを見る気にもならず、だいぶ疲れていたらしく、夜はソファーに寝っ転がって鈴木の本を読んでたら眠ってしまい、風呂にも入らずに布団を敷いて寝た。

いろいろと物の考えというものは変化していくのだけど、最近はかなりその変化のスピードが速く、首尾一貫性を持たせるのはもう難しい感じになっている。今朝もいろいろ考えていたのだけど、創作の魂とか、自分の日常性とは何か、とか、何かそのあたりのことを考えたりしてたのだけど、なんとなくつけた日曜美術館で船越保武を取り上げていて何の気なしに見ていたら、すごく感動してしまった。彼の作品を実際に見て覚えているのは長崎の26聖人の像だけなのだけど、取り上げられたどの作品も美しいなと思ってみていたら、脳梗塞で右手が動かなくなったあとに作られた作品はもう圧倒される以外の何物でもないものだった。

「ものが美しく見えるときは、あなたの心も美しくなっているのです」だったかな、その言葉もすごく心に残る。「美術の学生はほかの学生にはない心の美しさを持っている。製作の瞬間瞬間にその美しさが現れる」というようなことを言っていて、それはなんだか実感としてすごく残った。自分にとって、美しさというものがいかに大事か、忘れていたものを思い出させてもらった気がした。

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by Luke Peterson

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