『魔法少女まどか☆マギカ』観了:人間が世界の秘密に踏み込むということ

Posted at 11/09/24

【『魔法少女まどか☆マギカ』観了:人間が世界の秘密に踏み込むということ】

今朝はずいぶん冷え込んで、私の地元は8度台まで下がった。冬用のパジャマで冬用の掛け布団をかけて寝たから寒くはなかったけど、起きてからずいぶん寒くて驚いている。上に半纏を羽織り、脚には膝掛けをかけてパソコンに向かっている。温かいお茶が美味しい。指が冷えて、字が思うように打てない。万年筆でモーニングページを書いていたときは気にならなかったのに、キーバードに向かうとすべての指を使うので寒さをより感じるということなのだろうか。

昨日は朝から忙しかったので、まど☆マギの6巻を借りに行ったのは仕事が終わったあと、8時過ぎで、実際に見出したのは10時を過ぎていた。11時過ぎに見終わって、呆然としてなにも考えられず、そのまま寝てしまった。起きたのは6時前。久々に6時間以上ちゃんと目覚めずに寝た、かもしれない。頭の中がどれだけ休まったかは…あれだけど。

ひらけ駒!(3) (モーニングKC)
南Q太
講談社

昨日は午前中に松本に出かけて身体を見てもらって、だいぶ良くなったということでまた1週間後に行けばいいということになった。午後、仕事に出る前にツタヤへ行こうと思ったのだけど、結局時間がなくて仕事が終わったあとに行った。ツタヤではまど☆マギの6巻を借りて、『ピアノの森』の20巻を買う。『草子ブックガイド』は探したけどなかった。『ひらけ!駒』の3巻が出ていたので買った。でもマンガを読む気がしない。まあモーニング本誌で一度読んでいるし、『ピアノの森』の方は何度も読み返しているのだから当たり前と言えば当たり前なのだけど。連載時との違いを見つけるとかのコアな楽しみにも昨日は浸る気になれず、まずはまど☆マギを見ようと思った。

以下、ネタバレなので伏せます。直リンで来た方には関係ないので、ストーリーの超核心に触れることを書きますので未見の方はご注意ください。

魔法少女まどか☆マギカ 6 【完全生産限定版】 [DVD]
新房昭之監督作品
アニプレックス

6巻は11話と12話が収録されているのだが、初めて2話ぶっ続けで一気に観た。見終わったあと、いろいろな思いが渦巻いて考えがストップしてしまい、混乱してきたのですぐ寝てしまった。

朝起きてからiPhoneでツイッターにいろいろ書きこんでいるうちにだんだん考えがまとまってきた。混乱していたのはつまり、これはアリなのか、という思いと、逃げずによく作った、という思いがどちらもあったからだ。

しかしこれは、やはり「やってはいけないこと、行ってはいけない場所」に少し踏み込んだ作品なのだと思う。それをユウキと評価するか無茶苦茶と評価するか。いろいろ考えたけれども、「節度ある暴走」とでも言うべき試みというのがいいのではないかと思った。つまり、「神の領域」に踏み込んでいることについてだ。

そういう形而上的なところに踏み込むことは、私などもまだものを書いていない無邪気な時代にはよくやっていたけれども、モノを書き出してから、そういう試みをして途中まではすごく面白かったのに結論としてわけのわからないことになった作品をたくさん見てきたし、またそっちの方へ行ってしまって帰って来られなくなった作者たちをたくさん見てきたから、自分の中でそちらの方へ行くのはある程度セーブしているところがあった。つまり、それはよほどのことがなければ人間の限界を超えたこと、ある種のタブーだという思いが強かったのだけど、それもまた一つの「心の殻」だったのかもしれないとも思う。

この「まど☆マギ」がそれに成功しているとしたら――まだちゃんとは評価は下せない――それは、「希望」という「強い思い」を表す言葉を梃子にして飛翔を試みたことによる、のだと思う。日常にあるが、日常そのものではない。形而上の要素もあるが、形而上そのものではない。人間がそれを毎日のように「呼吸」しているのに、叶うとは限らない思い。叶うとは限らないのに、それなしでは生きていけない思い。神とは何か、と言った形而上的な疑問から迫って行った作品がことごとく崩壊している(『神曲』とか古典になったものをのぞき)一方で、まど☆マギはそこに目をつけたことによって作品として成立させることに成功した。

考えてみると、身体操法でも一番重要なのは「呼吸」の取り扱いにある。操法とは、また整体法一般は意識的な動きによって無意識の動きを改善する、意識的な身体操作によって無意識的な身体の状態を活性化し、問題を解決するところに要があるわけだが、無意識の動きであり意識的にも操作できる『呼吸』がその接点として非常に重要なポジションを占めている。整体操法は操作される側が息を吸ったときにやること、息を吐いたときにやることなど、呼吸をうまく使うことによって成立した技術だ。そこに「思い」によるその人全体の状況を変化させる方法と共通した部分があり、その「強い思い」である「希望」あるいは「願い」をすべてを転換させるキーワードにした作者(新房昭之監督?)が成功した理由なのではないかと考えてみたりした。

希望を悲しみで終わらせない。願いを恨みや憎しみで終わらせない。終わらせたくない。その強い思いをもったまどかが世界のルールを変える。それはつまり、物語の根幹を、設定そのものを変えるということになる。その荒技が繰り出されたので見ていて最後に目眩を感じたのだなと思う。

希望を悲しみで終わらせてはならない。願いを恨みや憎しみで終わらせてはならない。強い願いをもって魔法少女になった多くの少女たちを、その願いに応じた恨みを獲得して魔女に堕して行く、その構造自体を変えなければならないという思い。そのためには自分はどうなってもいい。それは、世界を救うために何千年もの間修行し続け、すべての人を浄土へ往生させようという観音の、弥陀の請願と択ぶところがない。これは実に宗教的なテーマなのだ。特定の宗教が文化的バックボーンにあるわけではない日本において、この作品世界を成り立たせることはかなり危ない橋を渡ることになる。心して渡らないと幸福の科学の宣伝アニメになりかねない。しかし逆に言えば特定の宗教の教義に縛られずにこうした内容を描けるという強みも日本での作品制作にはあり、こうした領域に踏み込むことが常に生命の危険を伴うヨーロッパやイスラム世界とは違う、日本ならではの作品ではある。

まあ人間が世界のことについて知れる領域はほんのわずかなことなのだ。改めてそう思うのだけど、でも世界のことについて人間が踏み込める「隙間」のようなものがあちこちにある。文学なり、作品制作というものは、その「隙間」をうまく見つけて「世界」と人間との通路をつくることなんだなと思う。身体操法の世界ではそれが無意識的な動きと意識的な動きをつなぐ「呼吸」であり、人の心の世界では無意識的な思いと意識的な思いをつなぐ「希望」あるいは「願い」なのだろう。そして身体操法によって劇的に腰痛が改善される(立てなかったのが立てるようになる)ことがあるように、希望の力で世界の構造を転換させるストーリーを作者は書いた。

しかし並大抵の人間が、それだけの「希望の力」「願いの力」を持てるか。持てる、という解もあるが、物語の中でそれに十分な説得力をもたせるのは難しいだろう。しかし作者は、そうした強い願いの力をもつまどかの力を育てたのが、まどかを救いたいという願いの力で何度も同じストーリーを生き直したほむらだった、という構造、むしろパラドックスとさえいえる壮大な構造が作り上げられているのには本当に驚いた。作者はこの設定を思い付いたときに、これはすごい作品になると確信して、感動したんじゃないだろうか。私だったらその感動だけで三日は過ごせるような気がする。

誰かの願いは、誰かを神にしてしまうほどの力をもつ。このテーゼは、十分に成り立つような気がする。素質はあるが弱いチームが、熱心な応援の後押しを受けて優勝してしまうことだってあり得るように、才能の片鱗は見せても自信の持てない作者が熱心なファンのサポートで素晴らしい作品を次々と生み出して行くことがありえるように。

誰かの願いは、誰かを神にしてしまうほどの力をもつ。この文の主語を「少女」にしてしまうと、アニメになる。「少女の願いは、もう一人の少女を神にしてしまうほどの力をもつ。」それがまど☆マギなのではないだろうか。

少女を主人公にしたアニメの中には、すべての人が思い入れのできる、自分に引き寄せてみることができる作品がある。それは、人間のもつ弱さとか脆さというものを少女という象徴に託しているからであって、だからこそ決意の強さ、思いの美しさがより際立つことになるわけだが、言葉を変えて言えば少女は単なる少女ではなく、少女に託して人間一般が描かれているということなんじゃないだろうか。

まど☆マギを見始めたのが19日の月曜。見終わったのが23日の金曜。腰痛が発生したのは13日の火曜で、動けないほど悪化したのが15日の木曜。18日の操法でよくなり始めてはいたけれども。17日から20日にかけて、父の終末期をのぞいて必ず上京していた習慣が途切れた。そしてこの同じ期間に、11日に急報をきいた友人が亡くなった。橋本武の国語の授業を知り、自分の教育に対する思いの間違っていなかったことを知った。この9月。何か大きな転換点になりそうな気がする。

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