物語の構造やパターン/『女の子のための現代アート入門』

Posted at 11/04/15

新しい作品を書こうといろいろ構想を練っているのだけど、なかなか定まらない。物語がどんなパターンがあるのか、私が好きで読んでいる話はどういう構造を持っているのか、さまざまなパターンの中で自分が書きたいのはどういうパターンなのか、などということについて考えてみたりしている。

思い浮かんでくるイメージをそのまま書いてみたら、『きことわ』みたいな雰囲気になってきて、これは影響されたのかもともと自分の中にあるものなのかと思うときことわ自体に影響されたわけではないにしてもきことわに影響した多くの小説作品から自分が影響されているということは言えるわけで、そういう意味で私の書き殴りですらすでに歴史の中に、今までの歴史の延長上にあるということは言える。私は今までそのことにあまり自覚的ではなかったけれども、そういう無限のコンテクストの延長上に新しい作品が編まれて行くということにはもっと自覚的になった方がいいように思った。もちろんお約束というか誰でも使うような要素の使い方というものもあるのだけど、自分の読んだことのある作品と同じ要素を出すということはオマージュであるか挑戦であるかパロディであるか(大体その三つかな)であることになるし、そうでなければ安易な模倣ということになったり、コンテクストを誤読されかねないことになったりしてしまう。コンテクストの網の目をどういうふうにかいくぐって行くかというのも面倒と言えば面倒だしスリリングだと言えばスリリングだ。

私が好きなものは、どうしてもある種の「成長物語」であるなあと思う。子どものころに耽溺した『ナルニア』もそうだし、大学生のころに好きだった諸星大二郎の『西遊妖猿伝』とか今読んでる『ランドリオール』とか『ピアノの森』、あるいはジブリの作品などでもみな成長物語だ。白洲正子が青山二郎に鍛えられるエピソードも好きだし、村上春樹なども何かが欠落した主人公がその何かを回復して行く癒しと再生の物語も、成長物語的に読み替えて読んでいる部分があるような気がする。育っても先がないことが分かっている『わたしを離さないで』などはだから切ない。

ダンテの『神曲』やタブッキの『インド夜想曲』など、地獄めぐりの物語もやはりその過程での主人公の変化・進化がある。何があっても戻ってきて元の木阿弥、みたいな別役実の芝居とか「苦役列車」みたいな小説はどちらかと言うと徒労感がある。人生は徒労だというのも一つの哲学ではあろうが、私はそんなふうには生きたくない。

まあそういうふうに考えてみると「右肩上がりの話」が好きだ、という表現も可能だろうか。でも単純にそれが上手く行けばいいというわけではないが、ここまで行ったらハッピーエンドになってほしいとかそういうことを思うこともあるし、そうじゃないフラグが立ちまくっていて半ば事前に切なくなったりすることもある。ああ、わりと単純だな人間が。

設定がすべてという小説もあれば、主人公の魅力的なキャラクターがすべてを引っ張るという話もある。テーマ主導型の小説もあれば、もう文体だけで読ませて行くというタイプの小説もある。

そうして小説は否応なく時代を反映するわけで、多かれ少なかれ地震と津波と原発を同時代人として体験してしまった影は多くの日本人に確実に刻まれているわけで、私なども物を書くときにそれを全く無視することはできないだろうと思う。(無視する振りは出来るだろうが)

やはり今必要な小説はどういうものなのだろう、今書かれなければならないのはどんな小説なんだろう、と考えざるを得ない、というか、考えているとおのずとどこかにそういうものが影をさしてくる。津波や原発がそのまま反映するようなものを描くのはまだあまりに生々しくて難しいと思うが。

***

今日は朝から少しそういうことを考えた後、職場に出て職場のちょっと気になる棚などの耐震化をしたりしていた。なかなか完璧とはいかないが、一つの棚を交換して少しはましになったかと思う。

昨夜、アマゾンで注文していた長谷川祐子『女の子のための現代アート入門』(淡交社、2010)が届いていた。現在44/159ページまで読んだがなかなか面白い。現代アートの見取り図のようなものが簡単に描ける感じ。まあ題名はアレだからアレなんだが中身は別に男が読んでも全然問題ない。多少フェミナンな視点とフェミニズム的な視点が感じられないこともないという程度ではある。

女の子のための現代アート入門―MOTコレクションを中心に
長谷川祐子
淡交社

しっかり気合を入れないといけないなというようなことがあったのでわりとガンガン仕事をしている。それがプラスに出ているとは思うが、まあ仕事量が多いと疲れることは疲れる。

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