朝吹真理子とか高野文子「奥村さんのお茄子」とか

Posted at 11/01/18

昨日。また相撲中継の途中で出かけた。銀座に行こうかなと思ったのだけど買いたい本は決まっていたのでまっすぐ丸の内に行って丸善でマンガを二冊買う。ヤマザキマリ『世界の果てでも漫画描き』(創美社、2010)と高野文子『黄色い本』(講談社、2002)。そのほか何冊か見て、特にジラール『エロティック・ジャポン』(河出書房新社、2010)は相当面白そうだったのだが、値段が高いのと本当にほしいのかもう一度考えようと思って買わなかった。こういうテーマの本は今後重要性を増してくる気がする。

エロティック・ジャポン
アニエス・ジアール
河出書房新社

昨日も今日も一番中心においているのは新しく書こうとしている小説のテーマというかプロットなのだが、昨日から今日にかけてなんとなく形が見えてきた。もう少し明確にならないとまだ書き始められないが、あと一息という感じだな。他の人は知らないが、私の場合は曖昧模糊としたイメージの中から自分にとって切実なものを探し出して、それを中心にして話を作っていくという感じになる。昨日、芥川賞を受賞した朝吹真理子が「言いたいこととかメッセージとかは基本的にない、ことばの海の中で愛の手紙を拾ってくる感じ」(なんかちゃんとした言葉は忘れてしまったけど、似た様なことをこちらで発言されている)というようなことを言っていて、案外そういうものに近い部分があるなと思った。まあ多分、メッセージがないというのもある種の作家的な嘘なんだと思うけど。とにかくこの人の作品は早めに読んでみたいな。

棒がいっぽん (Mag comics)
高野 文子
マガジンハウス

高野文子『棒がいっぽん』読了。「奥村さんのお茄子」を時間をかけて、ゆっくり読んだ。そしてこの漫画は、時間をかけてゆっくり読まないと、そのよさが全然分からない、ということが分かった。なぜならば、この作品は「時間」がテーマだからだ。

この作品を読んで気づかされることは、人間の時間は微細な一瞬一瞬の時間の積み重ねで出来ているということ。それはまるでうどんの切れ端をフライ返しでぐにゅっと広げるように広げてその微細な世界を注目していくことでしか本当にはわからない。慌てて一読したところでそれは分からない。ぐにゅっと時間を広げる感じを味あわなければ、この作品で作者が描こうとしていることは理解できないのだ。

そしてぐにゅっと広げてみると、そこにはほんの一瞬なのに一人一人にとって一生の間に通り過ぎたある瞬間というものがあり、そしてその時間を一人一人が、無限に多くの人が共有している。その一瞬に人々が考えていることはつまらないことだったりどうでもいいことだったりするのだけど、そのそれぞれのどうでもいいことがとてもきらきらした、魅力的なものに見えてくる。病気から回復すると、世界が本当にきらきらと輝いたものに見えるけれども、そういう感じに近い。ミクロの時間の世界を見ることというのは、ある意味普段見えなくなっている、つまりある種の病気の状態に陥っている自分からの回復という意味もあるのかも知れない。

そういうふうに見ると、この一瞬というものには仏が宿っているというか、仏性があるというか、神は細部に宿るというか、そういう種類の、ある種崇高な感動を覚えるわけで、かけがえのない、というような言葉で言うことも出来るけれども、それではとらえきれないしんとした神聖な感じが残る。物語自体は奇想天外、奇妙奇天烈で筋だけ追ったら何を言いたいのか全然分からないけど、そういう意味では筋にはあまり意味がない。設定にもあまり意味がない。ただ、しっかり時間をかけて読んでいくと、物語自体にも起伏があって面白い。ただその起伏が普通の感覚でとらえられるものではないので相当感覚を開いて読まないと入ってこない感じがする。「スーパーの店員さん」のさまざまな奇天烈な行動、とくに台所洗剤を飲んでしまったり、眼鏡が壊れて目を覆ってしまったりするところとかがよく読むとすごく物語の起伏という点で重要な要素になっていて、この奇天烈な一瞬もまたどうでもない一瞬と同じように大事な時間なんだという感じがしてくるのが素敵だ。

『世界の果てでも漫画描き』と『黄色い本』の感想はまたあした。

世界の果てでも漫画描き 1 キューバ編 (創美社コミックス)
ヤマザキ マリ
創美社
黄色い本 (アフタヌーンKCデラックス (1488))
高野 文子
講談社

何のかんの言って『棒がいっぽん』と『黄色い本』を読んだのであとは『るきさん』だけだな…

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