「本の面白さ」ってなんだろう/『勝手にしやがれ』のかっこよさ/『STAR WARS』がこんなにシンプルで爽やかな作品だったとは

Posted at 10/09/21

昨日は午前中に友人から電話がかかってきて、ずいぶん長電話した。いろいろ話したんだけど、全体的にやる気が出てきているようでよかった。私も名前は知っているある分野の第一人者と気持ちの琴線に触れるようなメールのやり取りをして、それで私も頑張らなくちゃあ、と思ったらしい。人間、そういうことで動くんだなあとちょっと感動する。友人は、私も人のことは言えないがいろいろ回り道をしてきている人で、何かきっかけがあるといいなと思っていたのだけど、そういうきっかけの出来方が一番いいんじゃないかと思った。私も頑張らなくちゃあと思う。

昨日のブログの『テキスト庵』への更新報告が14:42になっているから、それまでは家にいた。多分3時過ぎに家を出たんだろう。西友で牛乳パックをリサイクルに出して、向かいのツタヤでいろいろ物色。『スターウォーズ』(第一作)を借りようと思ったら全部貸し出し中だった。メディアを買おうと思っていたが、帰りに借りることにする。今書きながら気がついたが、メディアを買うのを忘れている。まあ結局、どうしても録画したいと思うほどの番組がなかったということでもあるのだが。それはそれとして、駅まで歩いて東西線に乗る。神保町へどうやっていこうかと考えていて、古書センターは神保町駅のすぐそばだから半蔵門線に乗ろうと大手町で下りて行ってみたら、運転見合わせになっていた。仕方ないので千代田線まで延々歩き、新御茶ノ水で下りる。がいあプロジェクトの書籍をのぞいたが目当てのものがなく、当初の予定通り古書センターまで歩く。

時計の歌 (1985年)
野口 昭子
全生社

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古書センターの5階にたにぐち書店が入っている。ここは『臨床家のための整体操法入門』などの出版もしていて、整体やカイロプラクティク関係の本を扱っているということをネットで調べて、野口昭子『時計の歌』(全生社、1985)を探しに行ったわけだ。最初見つからなかったのだけど、店の人に聞いてみたらちゃんと書棚に並んでいた。安堵して買い求めたら「カイロタイムズ」という新聞をつけてくれて興味深かった。まあ、業界紙みたいな感じだから、もともと業界相手の書店なのかもしれない。

古書センターを出て神保町を歩く。ここになかったら池袋の本店までいこうと思っていたので気は楽だ。久しぶりに岩波ブックセンターをのぞく。編集者の本とかぱらぱらと読んで、「本の面白さ」ってなんだろう、と思う。役に立つ本でなければ、面白い本を人は買う。私はいろいろなことが知りたくて本を読む、だから本の面白さというのは私にとっては「知らないことが書いてある」ということなのだけど、みんなそうなんだろうか。戦後の出版物のベスト5みたいなことを書いてあって、大体なんの役に立つのかわからない、好奇心を満たしはするんだろうけど、みたいな本が並んでいて、なんだか謎が深まった。私は、普通の本好きの人たちが求める「面白さ」というものを、多分あんまり分かっていない。だからどんな本を書けば読んでもらえるのか、ということもよくわからない。そういうのってある意味どうしようもないなと思う。「それを知りたければ、売れている本を読め」ということなんだろう。

私は「流行りものには飛びつかない」という格好のつけ方をしてきたので、多分いろいろ損してきたなと思う。もうそういう格好のつけ方はしても仕方がないなと最近思えてきた。「読まないことを自慢にする」というのは若気のいたり、つまり稚気であり、読まないこと知らないことがプラスになるという年齢は過ぎてしまった。本当は、誰もが面白いと思うもの、誰もが読みたいと思うものに「面白い」ということの本質的なものが隠されているんだろうと思う。読んでつまらないと思うのは勝手だが、読まないで批判する野が格好いい、と思う人を相手にするほど世の中の人は暇じゃないんだよな、と最近思う。

そんなことを考えながらすずらん通りの本屋を冷やかして歩いていて、マザーズに行ってみると下のレストランが営業しそうな感じがある。もう日も傾いてきたし昼食はそうめん一把とパン一枚だったからちゃんと食べて帰ろうと開店を待ちながらさらに本屋を冷やかす。5時になっていってみたがまだ開いていない。5時半になってもう一度行ってみたら、ようやく開いたようでやれ嬉しやと地下に下りる。久々に1260円のお替り自由コース。本当にここは、何を食べても美味しい。久しぶりに本当に満腹と感じるまで食べた。

私の文章作法 (文春文庫 (312‐1))
安岡 章太郎
文藝春秋

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腹ごなしに歩きながら、東京堂ふくろう店の「古本文庫屋さん」のコーナーで安岡章太郎編『私の文章作法』(文春文庫、1983)を買う。この本は、いろいろな作家が自分の文章の書き方について語っていて面白そうだった。まだ全然読んでないが。

帰りは一駅先まで行って別のツタヤに立ち寄り、DVDを探す。さっき書いたような関係で、私は映画も世界的にヒットしたような映画はあまり見ていない。だから何を借りてもいまさらながらという感じではあるが今からでもいろいろ見てみたいと、まず『STAR WARS』の第一作、今はエピソード4と位置づけられている作品を借り、ついでに何かと思って物色して、結局ゴダールの『勝手にしやがれ』を借りた。これもまだ見ていないのだ実は。

帰ってきてまず『時計の歌』を読む。これはこの間操法を受けに行ったときに待ち時間に読んでいて、そこにピアニストのパハマンの話が出てきたので夢中になったのだが、最後まで読めなかったので気になっていたのだ。しかし、実はあまりパハマンについての話は多くなかった。しかし、これは『朴歯の下駄』(ちくま文庫版は『回想の野口晴哉』と改題)の続編のような作品で、読んでいていろいろ面白いし、昭子夫人の実家の近衛家の話もいろいろ出てきて興味深い。文中で手来る湯河原の別荘というのは現在では昭子夫人の甥に当たる細川元首相が住んで窯を焚いたりしている。それを先日テレビで見たのでいろいろ興味深かった。106/343ページ。ただこの本は、急いで読む必要のない本なので読み終わるのはいつになるかわからない。しかしそういう本ほど早く読んでしまうものなんだけど。

勝手にしやがれ [DVD]

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それから、『勝手にしやがれ』を見始める。そのカッコよさに圧倒される。ゴダールは、自分が大学生のころに『パッション』を見たのだけど、どうも自分とセンスの合う監督じゃないなと見切りをつけ、あと一作ぐらい見た覚えは歩けど旧作を見る気になっていなかったのだ。しかし何だこのカッコよさは。しかもジャン・ポール・ベルモンドだ。こういう実験的な芸術映画系統の監督に大衆スターが出ている、それが1960年代のヌーベルバーグのよさなんだな、と思いながら見る。ただ、集中力があまりないので、20分ほど見て休憩。ウィキペディアでいろいろ調べたり。ベルモンドは『気狂いピエロ』を最後にゴダールと訣別しているとか、主演女優のジーン・セバーグがヌーヴェルバーグの寵児になったあと公民権運動などに関わって公安にマークされるようになり、鬱病がひどくなって1979年にパリで自殺したとか、いろいろなことを知る。しかしこのジーン・セバーグって、どこからどう見ても大竹しのぶそっくりだ。大竹しのぶが真似したのかもしれないけど、顔立ちはもとより髪型もメークもよく似ていて、既視感があって困った。

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途中で頭を切り替えようと『スターウォーズ』を見始める。昔だったら絶対しないが、大体昔は本もいつも一気読みだったので、並行して読むようになった今は映画だって並行して見てもいいだろうという感じ。最初、吹き替えになっていてそれを英語音声、日本語字幕にするのに少し手間取った。結論からいえばこれも見てよかったという感じだ。この一作ではまだ壮大なサーガという感じではなく、ハリウッドのエンターテイメントがSFXやらさまざまな特殊撮影を駆使して追求されている感じではあるけれども、簡単にいえば文句なく面白い。突っ込みどころも満載なのだが、それは未完成の故ではなくて、ここはアメリカ的だなとか西部劇を突っ込んであるなとか、黒澤映画の影響だなとかまあそういう突っ込み方で、生産的だ。お姫様がとんでもなく高飛車で楽しい。あの当時はウルトラマンとか宇宙戦艦ヤマトとか日本アニメの焼き直しじゃないかとか、題名が安直過ぎて嫌だとか、まあそんなことにこだわっていたのだが、何というかこんなにシンプルでストレートで爽やかな印象さえある作品だとは全然思ってもみなかった。

見ていると、その後の日本映画や日本マンガにも大きな影響を与えているなあと思う場面がたくさんある。ある種のオマージュが捧げられる作品なんだなと思う。諸星大二郎の『西遊妖猿伝』西域編に砂漠の中に古代の龍の骨が横たわっている場面があるのだが、これはC-3POが砂漠を歩いている背後に恐竜の骨が横たわっている場面を引用しているんだろうなと思った。『ランドリオール』のアカデミー騎士団が一緒に戦ったイオンから勲章を渡される場面があるのだけど、これもレイア姫からルークとハン・ソロが勲章をかけられる場面の引用を感じる。

こちらの方は2時間を越える作品で、『勝手にしやがれ』は90分なので『勝手にしやがれ』から見ようと思ったのだけど、結局『スターウォーズ』を最後まで見て寝た。寝不足でいい場面を見逃したので何度も後戻りしながら見たせいで、結局寝たのは1時半になっていた。

馬鹿げたことだが、結局朝は6時前に目が覚め、『勝手にしやがれ』の続きを見る。うーん、映画というのは朝見るものじゃないな。いや、学生時代はよく映画館で最初の回から見たものだが。どの場面もカッコよくて、一つ一つの場面を覚えてしまいそうな感じ。それは『スターウォーズ』の方も共通している。本当に両方とも中身が濃い。大ヒットした映画にはそれだけの理由があるんだなということを今更ながら思い知らされる。こんなものを見ないで死んだら確かに勿体無いと思うのだけど、逆に今まで取っておいてよかったかも、とも思う。まだまだ自分の栄養になる映画はたくさんあるなあと思う。

ウィキペディアで、ゴダール自身が「密告者」という役で出ていることを知り、そこをもう一度検索して見てみたが、なんだか可笑しい。まあベルモンドの役はホントにろくでなしの限りを尽くしているところが面白いのだが、「さして美人でもない」パトリシアに魅かれてしまって墓穴を掘る、というところが面白い。パトリシアも自分がミシェルを愛しているのかどうか自問自答しながら警察に密告したり、ミシェルも逃げられるのにつかまったり、いろいろ面白い。一つ一つの場面はどれもすごく絵になる。それにしてもみんなもくもくと煙草を吸ってるな。ヤクザ映画を見たあとみんな自分がヤクザになった気がするとよくいうが、この映画を見ていると自分がベルモンドみたいなろくでなしのかっこいい女たらしであるような気がしてくる。名作というのはそういうものかもしれない。

というわけでけっきょく今日も寝不足。

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by Luke Peterson

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