あぶく銭で暮らすということ/ようやくテーマが見えてきた

Posted at 10/07/09

昨日。仕事は前半は暇だったが、後半はだんだん忙しくなって、大体いつものペースに戻った感じ。午後10時まで仕事をして、帰宅、夕食、入浴、就寝。おとといはオランダ・ウルグアイ戦のダイジェストを見て、昨日はドイツ・スペイン戦のダイジェストを見た。あれだけのびのびしていたドイツの若手が、スペインとやるとどうも好きに動けない。そういう感じを見ていると、確かにスペインは強いなと思う。しかし今回は、スペインよりもオランダじゃないかな。でもその前に三位決定戦がある。ドイツはミュラーが出られるし、ウルグアイには勝つんじゃないかな。モチベーションが落ちてて負ける、ということもあるかもしれないが。まあ、予想はタコのパウルがしてくれるから、ここではやめておこう。

グローバル資本主義と日本の選択――富と貧困の拡大のなかで (岩波ブックレット 779) (岩波ブックレット NO. 779)
金子 勝,武者 陵司,橘木 俊詔
岩波書店

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金子勝ほか『グローバル資本主義と日本の選択』(岩波ブックレット、2010)読了。何ていうか、金融セクターにいる人とそれ以外の人とでは考え方が180度違うんじゃないかという気がした。金子氏は危機の原因が金融的で解決策は実体経済で図らなければならないとし、武者氏は原因が実体経済の側にあり、金融的に解決する、とみている。まあ大体、無軌道な金融の自由化、金融工学の発達のし過ぎが原因だ、とまあ、私なんかの知識だとそういうことになるわけだけど、武者氏に言わせると危機の多くの原因の一つは、世界的に新興国が出てきて供給力が爆発的に増大しているのに、需要がそれについてきていない、そのアンバランスが原因だと。今までは需要の担当をアメリカ一国が担ってきたが、日本をはじめとする先進国はもっとそれを担って行かなければならない、ということになる。簡単に言えば、日本人はもっと金融でもうけ、もっと消費しろという主張だ。ものづくりはもう衰退するし、新興国に任せておけばいいと。

私などはそういう主張にはついていけないが、若い人はついていける人もいるんだろうなと思う。そうなるとつまり、「金融で儲けてあとは消費に専念する」という生き方が幸福かどうか、という話にもなってくる。それを受け入れられる人がどれくらいいるか。まあ、「金持ち父さん」とか「幸せなお金持ち」という概念で理想としているのはそういう状態なんだろうと思う。やっぱりそこは、人間的にいびつな気がしてしまうのだが、そうならないための、「有産者の哲学」とか「有産者の倫理」みたいなものが必要になってくると思う。まあ、そういう人たちが欧米ではNPOであるとか慈善事業的な方向で金を使って社会に貢献する、社会に還元する、ということになるんだろうと思う。日本も戦前の金持ちというのはそういう人がたくさんいた。金持ちのスケールも大きかった。

まあ考えてみれば、資産運用で食べていける人が100万人増えたら、すくなくとも100万人分、雇用創出をする必要がなくなる。そういう方向性もありなのかもしれない。不安があるとすれば、万一のことがあった時に働いた経験がない人がどうやって食べていけるのかということと、ときに暴騰し時に暴落する昨今の金融市場で破産する人だってそう少なくはないだろうということだろうか。戦前は旧大名家など、そういう資産で生きている人もたくさんいたが、金融恐慌の時の十五銀行の破綻で財産をあらかた失った人がたくさん出て、大名家の旧蔵品などが市場にたくさん出るということがあったけど、今後はそういう成金と没落の常なき世になるのではないかという気がするということだろうか。まあつまり、私などはどうしても金融による儲けというものに「あぶく銭」という観念が付きまとってしまうからそういう風な発想になるんだろうな。

しかし我々がそういう「あぶく銭」による生活を嫌う傾向も、度重なる恐慌や戦後のハイパーインフレなどにより資産価値が限りなく下落した経験から、専門を持ったり地道に働いたりすることこそが確実に生き残る道なんだという教訓を強く持つようになっていて、いまだにその呪縛から抜けられないという面もあるのではないかという気もする。

しかしだからと言って、金子氏ら金融の無茶によって実体経済が傷ついて、実体経済から立て直さなければならないという意見の方でも、結局需要の掘り起こしということに関してはグリーンニューディールといった環境の方に活路を見出すしかない、という感じであまり大きな可能性を感じない。結局そういう意味で、この本はあまり明快な解答が与えられている気がしない。まあそんなものあったらだれも苦労しないということなんだろうけど。しかし、武者氏が基本的に現在を世界的に見れば史上空前の繁栄の時代である、とみているのはやはりちょっと驚く。まあそういうところがついていけないところだが、日本の成長率でなく世界全体の成長率でいえばそういうことになるんだろうか。そうすれば確かに、世界を相手にお金のやり取りをしている人は当然儲かるということになるんだろう。私などもどうしても日本という足元しか見ていないのは事実だから、そう言われてもなかなかピンとこない。

うん、まあ、学ぶべきはそういうことなんだろうな。そういう見方もある、ということ。実際の世界全体の成長率というのも、たぶん調べればわかるだろうし、そうすればそのなかの成長センターに投資すれば儲かるというのも当然のことだ。そうね。グローバル資本主義というのはつまり、そういうことなんだな。日本の中で投資するときだってやはり儲かっている会社に投資するのが基本なんだから、世界的に見ても儲かっている領域に投資するのが当然のことで、まあそういう発想がなかなかないのは、手続きが面倒臭い、というくらいのことだろう。そういう実務的なところで障壁を感じない人は、きっと確実にリターンを得ているんだろうな。

まあなかなか、個人としても今までと同じやり方でやって行けば十分、というのがどこまで続くか分からないし、国の政策としても何に重点を置いてやって行かなければならないのかということもかなり難しい。多くの人の一致点は見出しにくい時代だろう。だから、カリスマ的な指導者が出てきたらみんなついて行くということになりそうだ。うまくいけばいいけど失敗すると世界が破綻しかねない。

ネグリ・ハートは『<帝国>』で、結局そのかじ取りを担っている世界中央政府的なものが形を取りつつあるということを言っていて、ほかのものをいろいろと読んだ感じでは、それはダヴォス会議とかそういうもののことを言っている感じだ。武者氏もこのシンポジウムで国家が経済の主体としての役割をすでに喪失している、ということを言っている。さすがにそこまでの認識はなかったので、やはりそのあたりもきちんと理解しないといけないと思うが、そういう方向で考えるとギリシャやアイスランドのような小国が昔日の国家と同じ感覚でふるまって大痛手を受けているというのもむべなるかなという感じだ。明らかに、国家は以前に比べると限定的な役割しか果たし得なくなっているということは確かだろう。経済における主権は、どの国もどんどん限られてきていると言えるのだろう。

そこで、市場主義は正しいか否かという問題がまた出てくるわけだが、国家がそういう体たらくであるとすれば、市場を信頼するしかないというのはまたひとつの考え方になってくる。もちろん市場は大失敗をやらかすし、いかに限定された権力であるとは言っても国家群も協調して行動すればある程度のインパクトを市場に与えられることもまた事実だ。しかしそれも一歩間違って財政出動をし過ぎたりすると国債価格の暴落、すなわちソブリン危機が起こったりすると言うように、かなり神経質なプレイヤーであらざるを得ない。また国家はどうしても自国のことを中心的に考えるから、逆説的に言って世界全体のことを考えているのは市場(あるいはその市場に参加するプレイーやーたち)だけだとも言えなくもない。世界全体のことを、世界全体のためでなく、自分の利益のために考えているのではあるが。まあそこで「神の見えざる手」が出てくれば倫理的な痛痒を感じずにいられるということもある。新古典主義あるいは市場原理主義が信奉され称揚されるのはそういうところなんだろう。

***

今日は午前中、小説の手直しをしていた。主人公の一人称を「私」から「ぼく」に変えるとか、じつは結構手間がかかる。ワードだから検索して一気に置き換えればいいかというとなかなかそうもいかない。一人称を使っているのは主人公だけではないから、結局一つ一つ全部見て行かなければならないのだ。そういう一見事務的というか形式的な変更が、実は物語の構造全体に大きな影響を与えるんだなと作業しながら思う。手直しというのは「書く」ということより「作業する」と言った方がいいような局面がけっこうあるんだなと思う。

小説のテーマも、ようやく見えてきた。私は結局自動書記というか霊媒的な書き方をしてしまうのでいったい何を書きたいのか書き終えるまで分からないことが多いのだけど、今回も一度書き終えてから数週間たってようやくこういうことがテーマなんじゃないかというのが見えてきた。書きぶりに関しても、自分がどういうことが好きだとか得意だとか、どういうことはなかなか難しいとか、何を工夫すればいいかとか、やりながら見えてくるんだなと思う。

まあそれにしても、テーマが見えないとなかなか何をやっていいのか分からない。見えてきて助かった。

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