「あなたは大切な存在で生きている価値がある」/「次善のもので満足せよといわれるのは耐えられぬことだ」

Posted at 10/01/26 Comment(2)»

昨日に比べると頭の中はすっきりしている。体調も万全とはいえないが、まあ大体いい感じだ。ただ本調子でないのは仕方がない。胃から喉にかけての調子も変だし、腰もまだ変な感じだ。腹もまだ硬い。全体に消化器系がこわばっているという感じかな。操法も近いが、自分でも何とか回復の軌道に乗せられればいいなと思う。

昨日は、クリエイティブな志向と因習的なものとのぶつかり合いのようなことを書いたが、今はそのへんはだいぶ整理された感じがする。どんなことでも、どう対処すればいいかが分かったらそう慌てることはないのだ。感覚が別の世界にいっているときには現実世界の対処の仕方が全然見当つかないから物凄いダメージを受けるのだけど、大体やってみたらそう大きな問題ではなかった、昨日の範囲では。もちろん検討しなければならないことはあるが、決めるだけ決めたら依頼したらあとはやってもらえることのようで、そう恐れるほどのことではなかった。

東京カフェじかん。 (2010年版) (SEIBIDO MOOK)

成美堂出版

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昼食に出かけたのは結局3時ごろになっていて、サンクスでポケットティッシュを買い、郵便局でお金をおろして銀座に出、東銀座のcafe634へ行った。『東京カフェじかん。』で見て前から気になっていた店なのだが、遅い時間にゆっくりランチが食べられるのがいい。デザート二通り、コーヒーもつけてとフルコースにしたから少し値が張ったが、ランチのみなら1000円以下。銀座というより下町の雰囲気の店だった。まあ、むかしなら木挽町ということになるし。

それからデパートに行ってギフトの話を聞く。大体概要は分かった。親切に応接してもらってよかったのだが、こういう話は疲れる。基本的にあんまり得意じゃないんだなと思う。田舎にいるときならそう気にならないのだけど、東京にいるときはもっと違うことに時間と労力を使いたいと思っているからだな。

自分の仕事をつくる (ちくま文庫)
西村 佳哲
筑摩書房

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話を済ませて教文館をのぞく。友人に良いといわれていた本を探してみたら、すぐに見つかった。西村佳哲『自分の仕事をつくる』(ちくま文庫、2009)。人間はものに囲まれている。ものというのは人間がつくったものだ。だから、人間は無言のうちにものをつくった人のメッセージを受け取っている。量産品のカラーボックスからは「裏は見えないからいいでしょ?」とか、建売住宅の扉からは「こんなもんでいいでしょ?」というメッセージが聞こえる。一方で、丁寧な時間と心がかけられた仕事に触れると、値段に関わらず人は嬉しく感じる。それは、「人間は、あなたは大切な存在で、生きている価値がある』というメッセージを常に捜し求めている生き物」だからだと著者は言う。そして、「結果としての仕事に働き方の内実が含まれているのだから、『働き方』が変わることから世界が変わる可能性があるのではないか」、という著者の仕事は深く頷くものがある。なるほどなあ。一つ一つの仕事を丁寧に時間と心をかけて行なうことで、それを受け取る人に生きている価値があるというメッセージを伝え、世界を変える。そういう考え方は、根本的に全くその通りだと思う。

自分のことを振り返ってみる。文章を書くときも、それだけの時間と労力、手間をかけて書かなければいけないなと思う。毎日ブログを書くのはいいけれども、ブログはそれだけの手間はかけていないし、かけていたら毎日は更新できない。ただ、更新し続けていないと書き続けていけない、そんな感じが私の中にある。本当はもっと推敲して、もっとシャープな、もっとかりっとした、それでいてもっと読みやすい、誰にでも読めるけれども誰にでもは書けない、そんな文章にしたいと思うのだけど、今のところは何か自分の中にあるものを掘り出してこんなんですよ、と見せるくらいが精一杯という感じだ。

本当は掘り出した中にあるいろいろな原石を磨いて、もっといいものにして見せるくらいのことはやりたいのだけど、一次的なものを書くよりも二次的に磨き上げていく方が遙かにいろいろな心の動きを使うし、抽象度も高まるのでこの世に戻ってくるのがその分大変になる。

そうか、だから文章の推敲、一次的な文章の二次的な練り上げというものをすることに躊躇を感じるんだなと思う。ピアニストは自分のピアノを聞いてイメージと実際の音のギャップを感じ、悩み、成長するのだという。また村上春樹も、一年かけて書いたものをまた一年かけて頭から10回も15回も書き直すのだという。私も自分の作品に足りないのは書き直しのプロセスだなと前から思ってはいるのだけど、抽象の世界に踏み込んで現世に帰還するときの梯子の架け方に自信がないという感じの部分がある。まあしかしこれも恐れていては何も出来ないので、時間のやりくりの仕方などを工夫して何とかしたいと思う。

この本は、現在82ページ。八木保、象設計集団、柳宗理と来てIDEOのボイルの項を今読んでいる。

ショパン:ポロネーズ全曲
ルービンシュタイン(アルトゥール)
BMGインターナショナル

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教文館を出て、cafe ohanaに行って見るが、閉まっていた。今調べてみたら月曜定休だった。引き返して山野楽器へ。さんざん考えたが、ルービンシュタインのポロネーズ集をやはり買うことにした。60年代の演奏と50年代初めの演奏があり、それも迷ったのだけど結局50-51年にハリウッドのRCAスタジオで録音したものに。「アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ」のCDがないので、それが聞きたいと思って、それが入っているこちらの方を選んだ。帰ってきて聴いたのだけど、ひとことで言って非常に優しい印象。ポリーニは哲学的で深い、アシュケナージはとにかく華麗、という感じだけど、ルービンシュタインは優しく、また一つ一つの音を実に丁寧に出している感じ。聴いて落ち着くというのはこういうピアノだなあと思う。他の演奏もまた聞いて見たいと思った。

なんとなくそのまま帰るのもあれだったので、交通会館の梅花亭に行って子福餅とか薯蕷饅頭とか買って帰った。

バベットの晩餐会 (ちくま文庫)
イサク ディーネセン
筑摩書房

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ツイッター関係をまたずっといじっていたのだけど、疲れたらディーネセン『バベットの晩餐会』を読むという感じで。この小説はとてもなんだか夢の世界という感じだったのだけど、最後にどんでん返し。そうか、そういう小説だったのか。ほんとうのテーマは「芸術家というもの」だったのだ。でもこれはさっき読んでいた『自分の仕事をつくる』に通じる話。「次善のものに甘んじて満足せよなどといわれることは芸術家にとって恐ろしいこと、耐えられぬことだ。芸術家の心には自分に最善を尽くさせて欲しい、その機会を与えて欲しいという、世界に向けて出される長い悲願の叫びがあるのだ。」作り手が最善を尽くしたものが受け手に伝えられ、お互いが幸福になる。それは何の変哲もない身近なポットから、1万フランをかけた晩餐まで、その本質は同じなのだ。

昨夜そういうことも書いてから寝ようと思ったのだけど、体力的にそういうものが残っていなかった。

一次的な書き物は、モーニングページもブログも含めて膨大にある。これを二次的なものに昇華していく時間をどう取るのか、その辺がこれからの課題だなと思った。

そうそう、ビックコミックも読んだ。料理ものが多くなってきたなこの雑誌。

"「あなたは大切な存在で生きている価値がある」/「次善のもので満足せよといわれるのは耐えられぬことだ」"へのコメント

CommentData » Posted by behind-Eyes at 10/01/27

こんにちは。本に反応しました。

「自分の仕事をつくる」は単行本で出た頃に読んだのですが、主張されていることに共感しつつもなんだか物足りなく思ったことを覚えています。ただ、掲載されている八木保さんの仕事の仕方にはとてもあこがれているので、その点で垂涎の一冊ではあります。「八木保の仕事と周辺」という本もおすすめです。西村佳哲さんがリビングワールドで企画しているワークショップにも興味がありますが、まとまった時間とお金を用意するまでにはなかなか至りません。

「バベットの晩餐会」、僕も大好きです。そう、テーマは芸術についてなんですよね。何かに価値を見出すという心の作用は、きっと生きることの本質に通底すると思います。1万フランのために人生があるのではなく、一夜1万フランの晩餐がその後の人生をずっと潤しつづけることだってある。その納得はもちろん普遍的なものではないわけですが。千利休が安土桃山の世で試みていたことも同じようなことではないかと思われます。おそらく商売人としての打算もふくみつつ。小説の世界のままである映画も傑作だと思います。晩餐会のシーンも見事!ディネーセンは「アフリカの日々」も面白いと思います。彼女自身がアフリカで過ごした過酷な日々が描かれていますが、そこにさわやかともいえる乾いた風が吹いているように感じられるのは、彼女がそれでも生きることに価値を見出そうとしていたからでしょう。彼女には一夜で1万フラン使えるだけの度量と覚悟があったのではないかと思えます。

お誘いいただいたツイッター、アカウントはあるのですが最近は全然やってないんです。それでもよろしければ、behindEyesです。そのうちにまたつぶやきだす所存です。

CommentData » Posted by kous37 at 10/02/08

大変失礼致しました。今(2/8)コメントの存在に気がつきました。せっかくコメントしていただいたのに、遅くなってしまって全く申し訳ありません。

物足りないという感じ、分かる気もしないではないのですが、結局は、自分自身が自分の仕事をどうするか、というときにどれだけ生かすことの出来ることを言っているだろうか、ということになる気がします。私はそれなりにいろいろなヒントをもらったように思います。でもそれは人それぞれということになるでしょうね。

バベットの晩餐会、いいですよね。「アフリカの日々」も面白いですか。機会があったら読んでみようかなと思います。

ツイッター、ちょっとメッセージを送らせていただきますね。

本当に失礼致しました。

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