高橋留美子の推薦文/魂の世界で起こっていること

Posted at 07/06/03

金曜夜に帰京。体調はだいぶましになった。車内では、実家のほうにおいてあったヘルマン・ヘッセ『ヘッセの読書術』(草思社、2004)と近藤ようこ『水鏡綺譚』(青林工藝舎、2004)を読む。

水鏡綺譚

青林工芸舎

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『水鏡綺譚』は、もう何度も読み返している。今いちばん自分の感覚にあう作品かもしれないなあ。これが近藤ようこの最高傑作と言い切ってしまうと異論は続出だと思うけれども、何か一冊近藤の作品を選べばこれになるような気がする。表紙の帯に新潟中央高校で同級生の高橋留美子が推薦の言葉を寄せている。

水鏡綺譚は、長年忘れがたい未完の物語であった。旅が終わった今、この物語は愛しい泉の如く、心にあり続ける。
      高橋留美子

確かにそんな感じなんだよなあ、と思う。本当にこの世界に浸ることが好きな人のみに絶対的な支持を受けるけれども、世の中の目利きの人たちにとってみれば突っ込みどころはいくらでもあると言うような作品かもしれない。でも敢えて、この作品に対して目利きになりたいとは思わない。

ヘッセの読書術

草思社

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『ヘッセの読書術』はずいぶんむかしに買ってときどき少しずつ読んでいるような本。ヘッセの読書に関するエッセイ集なのだが、今回は「言葉」という文の中のフレーズが印象に残った。

詩人がこちら側に、公衆も住んでいる馴染みの日常生活の側にとどまっているときには、すべての言葉の貧困が際限なく彼を苦しめる。そして詩人として生きることは彼にとって、茨の人生のように思われる。しかし彼があちら側に、魂の国にいると、言葉がいたるところから次々と魔法のように彼の心に流れ込み、星辰は鳴り響き、山々は微笑む。そして世界は完全なもので、どんな言葉も文字も不自由することなく、すべてを表現することができ、すべてが鳴り響き、一切が解放される神の言語そのものなのである。

そう、魂の世界で起こっていることを日常生活の世界でも読める言葉で表現することが文学をも含めた芸術なのだが、今の日本の貧困というのは根本的に魂の世界に対する無関心にあるんだよなあと思われてならない。「人はパンのみにて生くるにあらず」とか、そういう言葉をもう少し考えた方がいい。

帰宅してから近くの蔦屋で中古のシングルCDを2枚買う。ゴスペラーズ『陽のあたる坂道』とアンジェラ・アキ『This Love』。ゴスペラーズはもっとゴスペルっぽいものかと思ったが、どうもあまり私の趣味じゃない。アンジェラはアルバム未収録曲があると思って買った。どこかで聞いたような気がする曲だったが、どこだったかな。

陽のあたる坂道
ゴスペラーズ, 安岡優, 野崎良太
KRE

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This Love (通常盤)
アンジェラ・アキ, 松岡モトキ, Samuel Sealhenri
ERJ

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by Luke Peterson

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