『フランス妖精民話集』:こわい話/結婚の条件
Posted at 07/05/20
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『フランス妖精民話集』続き。「不思議な動物」カテゴリ。全体的に短い。
「黒猫」。ほぼ1ページ。短いが怖い。諸星大二郎のマンガに出てきそうな黒猫。諸星だとそんなに怖いと思わないのに民話だと怖く感じるのは、表現方法に慣れていないせいだろう。怖いと思う話を久しぶりに読んだ。
というか、実際には「怖い」という感じを持ちながら話を読んでいることはあるのだろうと思う。ただ、それを「こわいなあ」と自覚していないだけなのだな、という気がした。なんとなく不快だ、と思うだけで怖いのだ、と自覚しないのはもったいないと思う。
「雌羊」。これも短い。短くてシュールだ。間違ったものがえらくかけ離れていてシュールな印象を持つことは落語などでもあるが、そんな感じに似ている。
「狼のミサ」。これも基本的には怖いな。始まりの段落にその怖さがすべて現れている。
狼は他のけものたちに似ている。狼には魂がない。狼にとっては、死の瞬間にすべてが終わる。けれども、毎年一度だけ同じ地方の狼が一堂に会してミサを聞きにやってくるのだ。このミサは、どこで覚えたのか分からないが、狼=司祭が取り行った。狼=司祭は、聖シルヴェストルの祝日に当たる一年の最後の日の真夜中に、祭壇にのぼる。噂によれば、狼=司教や狼=大司教や狼=教皇もいるという。しかし誰もその狼たちを見た者はなかった。狼=司祭についていうなら、問題は別だ。
「狼には魂がない。」この言葉は怖い。どうしてヨーロッパの民話で狼が常に悪者になっているのか、分かった気がした。『ナルニア』シリーズの『カスピアン王子のつのぶえ』にも狼が出てくるが、あの場面は怖い。ちょっと足がすくむような感じがある。しかしこれは、けだものとしての狼の怖さだけでなく、アナロジーでも怖い。この世には魂のない人間が満ち溢れていて、それは狼のようなものなのだ。そんな人間が普通の人間と同じような顔をして街を歩き、あるいはブログを書いている。少し話をしたり、少しブログを読んだりするだけではそれが狼であるかどうかは分からない。しかし狼は確実にいて、彼らのミサを執り行っているのだ。
「十三匹の蝿」。「仕事の手伝いをしてくれる動物」シリーズ。この蝿たちがいつも仕事のやる気に満ち溢れていて、「ブンブン、仕事はどこだ」といっているのが可笑しい。働き蝿というのはさすがに奇抜で、見たことがない。
「妖精」カテゴリ。これは何だかいい話が多い。
「双子と二人の妖精」。約束を破ってしまったために幸福が失われる話。それにしても、超自然のものに対する約束は守らなければいけないのだなと思う。本来人間に対する約束も守るべきなのだが。
「マリと三つのオレンジ」。この話は好きだ。オレンジの中から出てくる妖精と勝負をして、三回目に勝つことによって幸せを手に入れる。幸せとかがシンプルな形で現されていていいなあと思う。
「魔法の指輪」。試練を果たせずに山羊にされてしまった兄たちを、妹が救いに行く話。妹力。性悪な妖精を倒して兄たちを救い出すが山羊の姿から戻すことが出来ない。妖精の着ていたシャツに書かれていた文句を唱えると、山羊が元の兄に戻る。
シャツよ、シャツよ、死ぬまで
私の望みどおりになれ
この言葉は好きだ。シャツよ、シャツよ、か。シャツにはやはり何か魔力があるのだなと思う。『部屋とワイシャツと私』という曲があったが、あれも何だか魔法をかけている曲の感があった。
兄たちを救い出し、金持ちになった娘は、けっきょくこのシャツがあまりに汚いので洗濯してしまう。しかし乾かしていたら浮浪者に盗まれてしまい、娘は絶望して死ぬし、兄たちは泥棒を追っかけたまま帰ってこなかった。ハッピーエンドと思いきや、最後にどんでん返しが起こるところが民話の怖いところだ。
「黄金の指輪」。知恵と勇気のある三番目の息子が病にかかった姫を救って結婚する話。この話には二つの試練がある。一つ目は、姫を治す真っ赤なオレンジを持って帰ること。兄たちはオレンジをオレンジでないと言ったために失敗し、王に処刑される。弟はオレンジを持ち帰り、姫を治すことには成功するが、姫と結婚させることが惜しくなった王は弟にあらたな試練を与える。その試練を果たした弟はめでたく姫と結婚する。
これは、結婚には二つの試練があることを暗示している。一つ目は社会的に成功すること、二つ目は父親に認められることだ。そんなふうに考えて読んでいたら妙にリアリティがあって可笑しかった。
***
咳はまだ止まらないが、苦しいのは苦しいのを言い訳に仕事をサボっているせいではないかという気がしてきたので、ちょっと文章を書いてみた。この本ももうすぐ読了。
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