フランス文学勝利の理由/総合的な「知」の読み物としての歴史叙述/3・1記念日と「嫌韓流」2

Posted at 06/03/02

昨日は一日雨、夜には雪になっていた。朝目を覚ましてみるとうっすらと雪化粧。1月2月にほとんど降らなかったのに3月になったとたんに雪が積もるというのも何だかだ。昨日は来年度の準備関係のことがいくつか入って実際よりは気持ちがいろいろと忙しい感じ。今日はそのフォローがいくつか残っているが基本的には昨日よりは暇だろう。鳥がさえずるのが聞こえる。今日は晴れてほしい。

合間を縫って『プーシキン全集』5巻を読み進める。評論を読み終わり、「プガチョーフ叛乱史」に入る。プーシキンの評論はどうなのかな、と思っていたが、検閲の影響は痛々しいほど感じるのだが、学識の量と見識の深さはたいしたものだと思う。もちろん詩人・作家としての立場からの発言が多いわけだけど、それまでの時代における文学の状況の透徹した分析を踏まえつつ議論していて、それでいてペダンティックなところがなく、私はこういう評論が好きだ、と思う。詩や小説に比べてどちらがいいかといえばもちろん創作の方がずっといいけれども。

特に17世紀末のフランス文学がなぜ全ヨーロッパを制覇したかという分析は興味深かった。イタリアではダンテの「神曲」、ドイツではニーベルンゲンの歌とそれぞれの国は「国民的な詩」を持っているが、フランスは持っていなかったため、ルイ14世期の作家たちはギリシャ・ローマの古典に直接取材し、その古典的な骨法を身につけたため、全ヨーロッパの宮廷の好みと一致し、一斉を風靡するに至ったというのである。つまり「欠落」が「勝利」の前提条件だったという論理で、単純な言い方だが「頭がいいな」と思った。プーシキンはむしろ、そうした「頭のよさ」でコケた人かもしれない。

「プガチョーフ叛乱史」は作家としても歴史家としてもプーシキンの先駆者であるカラムジーンの「ロシア国民史」を意識して書かれたのではないかと言う印象。カラムジーンはセンチメンタリズム派といわれているようだが、どこかで感情主義と訳しているのを読んだ。「国民史」は帝政擁護と一般にいわれているが、どのような内容なのか、関心はある。「プガチョーフ叛乱史」は1章を読了したところだが、本文より注が膨大なのが驚いた。広範に収集した史料から多くの内容を引用している。1章は叛乱の前史ということで南ロシアにおける諸民族の状況やコサックの成り立ちについての考察も見られる。

コサックというのは民族というより「集団」とでも言うべきものかと思うが、どのように成立したものやら何を読んでもあまりよく分からないなと思っていたが、つまりはあまりよく判明していないということらしい。考えてみれば、民族集団にしてもどのようにして成立したのかなど明らかであることは少ないわけで、つまりはコサックは「制度」によって出来たものではなくある種の「自然発生」によって成立した特異な集団であるということなのだろう。

注が膨大なのはコサックの漁労の形態など直接関係あるのだろうかと思われる記述が多いということが大きい。プーシキンは自分が面白いとか興味があると思ったことをどんどん盛り込んでいるのだ。現在のわが国の歴史学の論文とは相当違うが、当時の論文は歴史学の枠を狭く考えず、そうした地理的なことや民族誌的なことも出来るだけ取り込んで総合的な「知」の読み物に仕立て上げるというものだったのかもしれないなとも思う。もちろん私の「趣味」としてはこうした書き方にひかれるが、本文と注とを往復し、また本文にも注にも訳注がついているので4箇所を往復しながら読まなければならないというのがちょっと「ごしたい」という感じである。

***

そういえば昨日は「3・1運動」87周年だ。盧大統領が靖国参拝を批判していたが、日本側も直ちに反論していた。そういえば先日『嫌韓流』の2が発売になっていた。最初からどこの本屋でも平積み状態で、立ち読みしてみたがいろいろ興味深いことも取り上げてあった。韓国や中国の「負の面」を学校教育等で全く取り上げないという「欠落」が情報の飢餓状態を生み、こうした書籍の「勝利」を生み出しているという面があるのは確かだろう。さまざまな場面で冷静な議論が出来る状況が醸成されていくとよいと思う。


ランキングに参加しています。よろしければクリックをお願いします。
人気blogランキングへ

月別アーカイブ

Powered by Movable Type

Template by MTテンプレートDB

Supported by Movable Type入門

Title background photography
by Luke Peterson

スポンサードリンク













ブログパーツ
total
since 13/04/2009
today
yesterday