ラテン語/一誠感兆人/「往生要集」

Posted at 05/11/04

昨日は文化の日。朝からゆっくりと過ごす。ラテン語がそれなりに捗った。それにしても、ラテン語という言語には動詞の複合形(have + 過去分詞のような形)がなく、全て動詞が変化するために膨大な変化形があるのだなということがだんだんわかってきた。一人称、二人称、三人称、それぞれの単数複数、直説法と不定法と接続法、不定法にも完了形があり、また未完了三時称(現在、未完了過去、未完了未来)、受動形もbe + 過去分詞ではなくそれぞれの時称について受動形がある。それに加えて完了受動分詞(過去分詞にあたる)もある。私の使っているテキストで言えば11課まで時称のレッスンが出ている(動詞の活用以外の項目もそれぞれの課に含まれている)のだが、今はまだ7課の直説法完了・過去完了をやっている。何度か復習しながら進まないとなかなか大変だ。

書く方も少しずつ進んだ。どうもラテン語に熱中しすぎてなかなか書けなかったのだが、少しずつ進めようと思う。黙霖・松陰の『往復書簡』も少しずつ読む。書簡原文に入っても最初は二人の意思が疎通していないさまが明らかだったのが、今読んでいるところはだいぶ意思が通じてきていて、手紙も長文になってきている。この時代の人たちが何を常識にしていたかと言うこともいろいろ発見がある。松陰が黙霖を仏図澄に例えているところがあるのだが、仏図澄と言えば西域から中国に仏典を伝えたということしか知らなかったけれども、この時代の人の理解(少なくともこの二人の間の認識)では石勒(五胡十六国の後趙を建てた武将)との関わりの方が知られていたようだ。彼らの問題意識は徳川将軍家が尊王および攘夷の中心となりうるかどうか、ということをめぐっての議論であるから、将軍家=幕府を感化して「正道」に引き戻せるか否か、という議論である。黙霖は不可と言い、松陰は可と考えるわけだが、その松陰の主張の背景には一誠感兆人(真心は全ての人を動かす)といういわば楽観主義がある。これを読むと確かに松陰は先生としてはいい先生だったのだなあと思う。

『日本思想史入門』は「源氏物語」と「往生要集」の項を読み終えた。「往生要集」の中にインドの祇園精舎における臨終の方法として仏像の左手に五色の細い布をつなぎその一方を自分の左手で持ち、仏にしたがって仏国に赴こうとする意思を持つ、ということが書かれているが、藤原道長の臨終の話を子どものころに『マンガ日本の歴史』で読んだときにまさにそのような描写がしてあったことを思い出した。なるほど彼ら平安貴族はそのような仏教の本場のファッション(かたち)を真似て成仏を図ったのだ。しかしマンガ日本の歴史ではそれが彼らの「心の淋しさから来ている」という風に決め付けていたが、それはあまりに信仰というものに対する無理解があるような気がしてならない。唯物史観的に考えればもちろん無意味な行為にしかならないが、そのような考え方が伝統文化に対する無理解と冷淡さを生んでいるのだと思う。

念仏という行が既に800年代に円仁によってもたらされていたことを知る。著者の分析によると、日本の律令政治は背景に氏族制があって成立したものだが、藤原北家による門閥支配が進行して没落する氏族が多くなり、現実の社会における氏族の紐帯が不安定なものになったために、新たに信仰による紐帯を求めて浄土教のサークルが生まれたり、また仏門においても門閥支配が進行したために寺院組織の外で修行する僧が現われたりしたのだという。この議論は納得できると思う。その線で考えると、社会的上昇を拒まれた中・下級貴族や不安定な位置にあった女性たちが出家によって「仏の世界」との精神的紐帯を求めたことも重なってくる。

これを極論すると、門閥支配が中世以後に現われる浄土教団を生んだとも言えないこともない。考えてみると、皇室の側からこうした門閥支配に対抗したのが院政であり、それを支えたのが門閥から外れた中・下級貴族と武士たちであることもつながっているし、門閥から外れた彼らが関東などに流離して武家の棟梁となり、あるいは土着の武士になっていくこともまたつながるわけで、中世の三要素(と勝手に私が考えるだけだが)である院政・武士・新興仏教教団は全て門閥支配そのものに胚胎していたといえるのではないかと考えが膨らむ。律令制度の古代国家を弁証法的に「正」とすれば中世はいろいろな意味で「反」であるといえるかもしれない。「合」が存在したかどうか、はまだ良く分からない。
夜は少し臨時の仕事。置いてあったビデオか何かの三脚が倒れてかかとを強打して、いまだに痛い。傷は擦り剥いたくらいだが、アキレス腱を伸ばすと痛むようだ。あまり今日は歩き回らず、おとなしくダメージの回復を待ちたいと思う。

朝は曇っていてやや寒かったが、今(10時前)になって明るい日差しも差し込み、空も晴れてだいぶ暖かくなってきた。7日はもう立冬。山もだいぶ色づいてきている。

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