10.西川賢「ビル・クリントン」を読んだ。面白くてためになり、アメリカの来た道が理解できたとともに日本の現状を理解する上でもとても示唆的だった。(08/12 11:37)


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あとは、冷戦終結後のNATOと日米同盟の位置づけについてもなるほどと思う記述があった。冷戦中のこれらの同盟関係はもちろん仮想敵国がソ連であり中国であったわけだが、冷戦崩壊後はそれが「地域の安全確保のための公共財」として再定義された存在であったということ。だからNATO拡大も別にロシアを追いつめる糸がなかった、という主張になるし、逆に中国が西太平洋は自分が安全保障を請け負うということを言い出すきっかけも作っていると思った。

アメリカの真意はともかく、地域諸国に取ってはNATOはロシアの脅威から自分たちを守るためのものだし、日本に取っては中国・ロシア・北朝鮮から身を守るためのものであるということが第一義であることは間違いないわけで、そこらへんのずれが「冷戦は終わった」というある種のフィクションと裏表になっていて、自体の複雑化を招いている気がする。

また、日本でさまざまな政策が打ち出されて来る時、日本政治の文脈の中から出て来たものでない、面食らうようなことが話題になることがあるが、それらの起源はアメリカで実施された政策にあるんだということがちょっと理解できた。つまり、日本政治を考える上でも、その発想の源として、アメリカ政治の動きを追って行くことは重要なのだと思ったのだった。

まだいろいろと検討してみたいことが出て来る気がするが、そんなふうに現代社会・現代世界の構造について、改めて考えさせてくれるきっかけになったという点でも、この本は読んでよかったと思った。


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