最近読んだ本で結構読めるのは日本史関係の本が多い。以前はあまり原典、つまり日本史の教科書に出てくるような史書に当たっていなかったのだけど、最初に読んで面白いと思ったのが、確か「神皇正統記」だった。これは南北朝時代に南朝の北畠親房が後村上天皇への傅育のために書いた歴史書だが、思ったよりずっと公平に書かれていた。例えば仇敵と言うべき北条氏でも北条泰時の統治や北条時宗の元寇撃退に関してはきちんと評価しているのを読んで、「南朝の正統性を説くために書かれた」と巷間言われていることと必ずしも一致しないと思ったし、批評を読んでもその本の中身はわからないと言うことのある種典型の例だなと言うことに気づき、それから時々原典を読むようになった。
その後読んだ本は「古事記」「日本書紀」「続日本紀」「大鏡」「増鏡」などだが、どれも読む前の思い込みを破ってくれる面があり、やはり読んでみないとわからないなと思った。ただ、「平家物語」や「太平記」などは割と苦手で(現代語や子供向けに翻案したものは子供の頃に読んだが)何もかも読めるわけでもないとは思った。
最近は中世史ブームということもあり、「応仁の乱」や「観応の擾乱」などが売れているが、前者は一応最後まで読了したが後者はまだ途中で、以前「室町の王権」など今谷明さんなどの著作を読んだ時とは少し感覚が違った。「応仁の乱」は史料に完全準拠して書くというスタイルなので、史料の著者目線がどうしても強くなり、あまり歴史的にその著者の立ち位置がよくわからない立場からすると、想像力の拠り所を確立しにくいという側面があると思った。ただ応仁の乱のようなグダグダの展開をする対象を描くには史料著者の視線というものを視線として確立しておくというのが唯一ブレにくい記述方法かもしれないとは思う。