4644.村上春樹『ねじまき鳥クロニクル』と『ノモンハンの戦い』(04/20 10:33)


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今日は朝から荒れ模様だ。風は強いし、雨も断続的に強く降っている。春の嵐。この部屋は、外の様子がよくわかる。家の後ろの、桜はそれでも、だいぶ開いてきた。もう数日で見頃になるだろう。

昨日は午前中散歩に出かけ、お城の桜を見に行ったのだが、まだここも満開というほどではなかった。しかしもう花見気分の人たちはたくさんいて、お城の護国神社も華やいだ雰囲気だった。染井吉野だけでなく、やや紫がかった私の好きな桜(里桜系だと思うのだが、品種はわからない)も咲いていて、満足だ。昨日は水曜で駅前の商店街は休日なのだが、お城の向うの三〇〇メートルくらい歩いた川の向うの書店は開いている。この書店は昔は仕事場の近くにあったのだが、広い場所に移転して、文房具も書籍もそれなりに置いてある。思いついて、この書店に歩いた。村上春樹の『ねじまき鳥クロニクル』が気になっていたので探すと、三冊揃っていた。とりあえず第一部のみ購入。

向かいのセブンイレブンに入り、黒糖カリントウとほっとレモンを買って、川を渡り『文学の小径』を歩く。ここも桜が植わっていて、ここの桜は見頃だった。この道はよく歩いたのだが、ここから分かれる道がいろいろな場所に出るのだということを先日知った。そっちの方にもまた歩いてみようと思う。石碑がいろいろ建っているのだがあまりまじめに見たことがない。なんというか申し訳的な感じでどうも風格がないのだ。周りは新造の普通の民家だし。終点は別の川で、三つ又の中洲が二つ続いているという説明しにくい地形。橋を二回渡ってまた別の川沿いに出、ここにそって上っていく。家の近くを流れている川はこれなのだ。

何を読もうかとしばらく考える。しばらく考えた結果、『ノモンハンの戦い』と『ねじまき鳥』を少しずつ読み、エリオットの『文芸批評論』も少し読むことにした。『ノモンハン』はソ連側の戦場の記録なので、どういう作戦に基づいてどういう戦闘が行われたのかということが詳しく書いてある。戦闘は1939年の五月・七月・八月に行われたが、今読んでいるのは最後にして決定的(だと思う)八月の戦闘の部分だ。五月・七月は日本側が仕掛ける形で行われたが、八月は主導権をソ連側が取っている。航空機などではソ連側が有利で、戦車数はソ連側が四倍だったという。この優勢をもって、先にソ連側が仕掛けたということなのだろう。ロジスティクスでも、ソ連側の補給体制はしっかりしていたようだ。戦闘の描写というのはどうもあまり読むのが気の進まないものなのだが、地図などは頭に入るので、地形的にどのようなところで日本が何を目指していてどういうところで行われた戦闘だったのかなどは理解はできる。少し読んでは止め、でまだ六〇ページほど。残りは三〇ページなのだが。

村上春樹『ねじまき鳥クロニクル 第一部泥棒かささぎ編』(新潮文庫、1997)を読み始める。これは(この日記を書いている)現時点での感想を書いておこう。今110ページまで、「5レモンドロップ中毒、飛べない鳥と涸れた井戸」の途中。『スプートニクの恋人』の感想にketketさんが反応してくださったが、やはりなんともいえない違和感を感じる人はいるよなあ、と思う。『ねじまき鳥』もまた、奇妙な身体的不快感がある。胸がむかむかする、というような。しかしこの小説には奇妙な勢いがあって、読んでいて途方にくれるというより、あっけに取られる。ずいぶん強引に、知らないところに連れて行かれる感じがする。

物語の登場人物たちは、最初はそこにいるのが当たり前のような顔をして(つまり匿名性の高い一般の人間のような顔をして)小説にでてくるのだが、読み進めていくにつれてどんどん変な人たちだということがわかってくる。そこにはある程度普通な「変」さもあるのだが、あまり普通でない変な人物たちも出てきて、しかし、実際にはこういう人間は自分の周りにも結構いる、ということに気がついていくイヤさ加減というのは一級品である。

しかし、小説で「狙って」変な人物を登場していることはよくあるのだが、たいてい破綻して読むに耐えなくなるのだけど、村上の場合は世界の統一性が実に堅牢で崩れない。世界のバランスが保たれているのである。奇妙なバランスではあるのだが。しかしいずれ、バランスは崩れ、アッシャー家のように崩壊してしまうのではないか、という感も持つ。しかしおそらくは、この崩壊状況はそんな簡単には訪れない。ことによると崩壊が起こる前に崩壊自体が不全化して「アンバランスが取れている」(昔よく言った冗談だ)中途半端さで停止するのかもしれない。


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