昨日。家出昼食を済ませ、午後は湖畔に行ったあと職場へ。職場の町内がお祭で、賑やかな声が聞こえてくる。静かな方が望ましい仕事場なのでちょっと困ったことでもあるのだが、夏はそういう季節だ。今日もまた午後からお祭だ。
<画像> | 日本の伝統美を訪ねて (河出文庫)白洲 正子河出書房新社このアイテムの詳細を見る |
白洲正子『日本の伝統美を訪ねて』を読む。読了。目崎徳衛との芭蕉と西行に関する会話で、西行の一所不在の精神、「一番もとのところにいきたいという気持ち」という言葉に印象を受ける。萩原朔太郎の言う「魂ののすたるぢあ」というのに近いだろうか。
一番印象に残ったのは車谷長吉との会話だ。これは、自分の記憶が正しければ『おとこ友達との会話』にも収録されていたはず。読んだ覚えがある。読み直してみると面白いと思うのだが、車谷の鬼気迫る執筆姿勢を白洲は「怖い」といいながら高く評価している。
話が合っているのは「立ち向かっていく精神」ということ。文学は気合だ、というと単純化しすぎだが、気合のこもった生きた言葉こそが文学の言葉だ、というのは何度かこの会話について反芻しているうちにそのとおりだなと思えてきた。気合、というか生きた「気」というものが文学の、また「美」というものの本体なんだ、という考えに思い至る。考えてみたらずっとそういうふうに思っていたのに、いつのまにか紛れてしまったんだな。結局作品にこめられたその気をどのように感じ取るかというのが美を味わう力ということなんだと思った。