3359.読売新聞の村上春樹インタビュー(下)/橋本治『大不況には本を読む』(06/18 11:54)


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<画像>大不況には本を読む (中公新書ラクレ)
橋本 治
中央公論新社

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昨夜、橋本治『大不況には本を読む』(中公新書ラクレ、2009)読了。以下の内容は昨夜書いたことなので、もしかして上の内容と矛盾することがあるかも。

前にも書いたが、橋本はこの本を大人の男、ビジネスマンと言われる人たちに対して書いている。その人たちに、この世界同時不況に際して、「自分の頭で考える」ことを復活することによって、我々がこれからどうすべきかの指針を見出さなければならない、そのためには本を読んで自分の頭で考えなければならない、ということを訴えている。

日本のビジネスマンとは江戸時代でいえば町人の末裔だ、というたとえが面白いと思った。江戸時代の日本では支配階級が武士で、被支配階級が農民で、そういうのと関係ない形で存在するのが町人だ、という理解はなかなか面白い。「そういうの」、つまり政治と関係ないところで自分たちの商売をするのが現在の会社員なのであり、だから必然的に政治とか思想とかそういうものとは関係ないところでものを作って売って来たのが日本の経済人だ、ということになるというわけだ。だから、根本的に日本のビジネスマンは欧米で言う「市民」ではない。「市民」は権力に異議申し立てをする存在だが、日本のビジネスマンは「そういうのとは関係ない」町人であり続けたのだ、というわけだ。それが「経済は一流、政治は三流」と言う分離した関係になっている原因で、西欧人の定めたルールにただひたすら乗っかって、「そういうのと関係なく」ものをつくりつづけ売りつづけた結果、どこよりも成功してしまったのが日本だというわけである。

1985年の「内需拡大」政策以来、日本人は特に必要のないものを買い始めることによって世界の景気の下支えに貢献してきたが、その無理が結局最終的に世界同時不況を引き起こした、とする。だから産業革命以来150年のどん詰まりがこの大不況であり、「経済は成長するもの」という前提が環境的な限界でいきづまった今、「経済は成長するものと」という前提を取り払ったとき、つまり「そういうのと関係なくただひたすら生産と販売に従事してきた」自分たちはこれからどうすればいいのかということを考えなければならない。そのためには本を読まなければならない、ということだ。

つまり、自分の頭で考えるために、本を読めと大人の男に訴えているのである。なんだかあたりまえの事を言っているだけのような気がするが、考えてみたら日本の大人の男というのは自分の頭でちゃんと考えてこなかった人がすごく多いだろうなと思う。簡単に言えば金儲けのことばかり考えて人間のあり方というものを考えてきた人があまりいないということだ。それも個人的にではなく、日本人のあり方として、というレベルのことを。

「金儲けのことだけでなく人間のあり方のことも考えろ」という主張は全くそのとおりだなとは思うが、逆に私などは金儲けのことをちゃんと考えてきてないので全然時代遅れだったのだが、逆に三周遅れくらいで先に走っているということになっている・・・といいなと思う。オバマの登場は、経済の時代の終わりと理想を語る時代の始まりを告げていると思っていたが、オバマの登場自体が近代のどん詰まり、経済の時代の終焉によってもたらされたのだと考えるべきなのかもしれない。面白い時代になってきたのかもしれないと思う。

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あわせて考えると、日本の転換点は1995年だけでなく、1985年にもあった、ということになるんだろうな。そして2008年にも。そのあたりのことを立体的に考えておく必要はあるんだろうと思う。(もう一つ2002年にもあった、という考えも私にはあるのだが)

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