3358.村上春樹『アンダーグラウンド』/ツジトモ『ジャイアントキリング』/勝間和代『断る力』(06/19 18:40)


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「一番最悪のパターンは、相手の指示に不満をもちつつも、断らずに指示をこなそうとすること。」これは全くその通りだと膝を打つのだが、でも現実にはこういう人は世の中に呆れるくらいに溢れている。特に女性のブログを読むと、そういう不満が溢れていてびっくりする。とは言っても実際私自身、そういうことはやっていて、それで体を壊したということはあるのでひとのことは言えない。「指示を出したときに質問が少なすぎる」というのが上司に注意をされたことだ、と勝間は書くが、私などは質問をしすぎてにらまれて、全然答えてもらえなくなったというようなことがむしろ多いから、質問しちゃいけないんだろうなあと思うようになった。今考えれば相手も半ば惰性でやっている仕事なのでその意義も本気では考えておらず、だから説明する気もないというようなものなのだけど、新入りにはそういうことはわからない。背中を見て覚えろ的な職人性というものを、日本社会では職人以外の世界でも重んじるところがあって、そういうのがやはり私は基本的に性に合わないんだなと読んでいて思った。でも日本では職人性が重んじられるわけで、重んじられる存在にはやはり近づきたいと思うわけで、そのへんで自我の分裂みたいなことが多分起こっている。

まあしかし、新人というものは仕事が分らないからまずやって見なければ話にならない、ということも事実あるわけで、そういうものをくどくど説明するよりまずやってみろということになるのは一理はある。しかし仕方ないからやってみて、結局これは自分のやりたいこととは絶対違う、というようなことが多すぎたんだよなあ、今考えれば。やはり結局職業選択を間違えたのか…あ、自分の世界に入ってしまった。

だから勝間の言う理論がどこの職場でも通用するかというとやはりそんなことはないと思う。しかし、逆にいえばその理論が通用しない職場――主に官公庁的な職場だと思う、学校教育現場なども含めて――は、いまや滅びようとしている分野なんだろうと思う。官僚制というのは本当にしぶとい怪物ではあるが、官僚機構そのものが変革されない限り、実際日本の未来は危ないとは思う。それが地方で起こっているのが知事や市長のニューウェイブであり、官僚や組合と徹底的に対立する姿勢の首長が大阪などで出て来ているのはそのせいなんだろうと思う。まあ完全に変わるまでは百年くらいかかるんじゃないかとは思うが。

「成功体験がないまま非常に限られた他者の評価に従う」ことが人生において最悪の事態を引き起こす、という指摘は全くその通りだと思った。オウム真理教の事件を起こした人びとの多くはそれだっただろう。またドメスティックバイオレンスの被害者になりやすかったりするのもそのタイプだ、というのは全くそうだと思う。私もそういう人たちを哀しいほどたくさん見てきた。自分には全く理解できないのだけど、ほんとうにそういう人たちは自己評価が低く、その人のマインドを握ってしまった誰かに逆らえなくなる。ストックホルム症候群などもそうだが、閉じられた人間関係の怖さはそこにあるのだろう。

自分の評価は自分で作っていくもの、自分で決めて自分で考えて自分の軸で評価して成功とする、つまり成功体験を繰り返すことで自己評価を高め、自己確信を育てていくというのは全くその通りだと思う。『子育てハッピーアドバイス』などを読んでいても今の子どもたちの最大の問題は自己評価が著しく低いことだ、と書いてあったが、なんか本当にそういうのは見ていて悲しくなる。

そしてその自己評価が夜郎自大にならないためには、出来るだけたくさんの他者の評価を集めることが大事だし、またたくさんの他者の評価を集めることである人の評価そのものを相対化でき、自分の正しい位置を認識しやすくなるということは言える。それは肯定的な評価も、否定的な評価も集めることがポイントなんだろう。自己評価にあまり自信がない人が肯定的な評価ばかりを集めたがったり、自己評価が本当に低い人が否定的な評価ばかりに引きずられたりすることは、大きな問題だ。大事なのは、どんなにすばらしいことをしても、否定的な評価は絶対にあるものなんだ、ということを肝に銘じることだろう。私もあることで成功したときに肯定的な評価に浸っていい気持ちでいたのに否定的な評価をされて妙に癪に障り、その人たちをあっと言わせてやろうと思ってドツボに嵌っていく、ということがあった。やりたいことをやったから成功したのに、その人たちに評価されるためにやりたくもないことをやろうとしてしまったのが失敗の原因だったと今は思う。肯定的な評価に溺れて自分を見失ったり、否定的な評価にひっかかって自分を見失ったりするのはばかげたことなんだ、ということにあの頃の自分は気がつかなかった。それはやはり、結局は本当の自己確信がなかったからなんだろうなと思う。何も考えずに自分のやりたいことをやる、ということが実は一番成功への近道にいるのだ、ということが、本当は言えるのだと思う。


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