27.「地元ワールド」と座布団とちゃぶ台の生活/「ふつうの軽音部」についてちょっと熱く語ってみる(04/01 08:08)


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ナンバーガールも同時代に聴いていたらどう思ったか、とは思うけど、田淵さんはボーカルもやってはいるようだけどやはりギターがかっこいいなと思ったのはどういうことかというと、音楽産業では女性をボーカルに立ててバックを男性が固める、みたいなのが多くて、まあある意味「私たちはボーカルをやらされた」みたいな感じがあり、これはカレン・カーペンターが本当はドラマーで、でも絵になりにくいからドラムをあまりさせてもらえなかった、みたいな話はあるなとは思う。

ただ、今のフェミニストとかTwitterの女性の声みたいなのを見ているとむしろ「自分がボーカル!楽器とかダルい!」みたいな人が多くて、なんかダサいなと思った。まあボーカルが主役という考え自体が古いと言えば古い感じはするが、やはり人間の「声という楽器」は無限のニュアンスを「言語という武器」も使って表現できるからある意味特別なのは仕方ないかなと思う。そこを削ってボカロに歌わせるという選択さえ今日ではできるというのがまあ我々が音楽を聴いていた時代と全然変わった点ではあるなと思うのだけど、どうもそういう人たちはそういう時代にあっても「女性にボーカルをさせないのは差別!」みたいなアナクロな感じがあり、そういう中で淡々とギターを弾く田淵さんはなんだかすごいカッコいいなと思った、というわけである。

https://rookie.shonenjump.com/series/pGBIkZlifOI

「ふつうの軽音部」はもともとジャンプルーキーという登竜門のサイトに連載されていた作品がジャンプ+でメジャーデビューしたという経緯があるわけで、ジャンププラスではルーキーでの連載をほぼ踏襲して作画が別の人が担当という形で連載されているのだけど、ルーキーでの連載についても根強いファンがいて、蛭子能収さんを思わせる中毒性の高いクワハリさんの作画の人気も高い。この作品には厘ちゃんという主人公のはとっちを崇拝する「パリピ孔明」みたいな軍師というか「ナニワ金融道」的な策士というかのベース担当高身長女子が出てくるのだが、そういうこともあるのかこのルーキーのバージョンを「原典」とか「旧約聖書」と呼ぶ界隈がある、というのを聴いてかなりウケた。まあ実際、「原典」にはマジ旧約聖書みたいな禍々しさがあるというか、オーラがあるので、このバージョンでも完結まで書いてもらえるといいのになとは思う。今のネームにもそういう味があるなら、ネームも読みたいと思ったり。

今回(第16話「ボーカルになる」)の展開は初ライブで大失敗したはとっちがさまざまなトラウマになった記憶に苦しむところから始まるのだけど、その中で「自分が本当は向井秀徳に憧れてギターボーカルになりたかった」ことを思い出し、声をキモいと言われたトラウマで自分の心に蓋をしていた、ということに気づいて、だから厘ちゃんに「はとちゃんがボーカルのバンドを作ろう!」と言われた時に死ぬほど嬉しかったのに、「期待を裏切ってしまった」、「だから」

「この夏休みで自分はボーカルなんだと胸を張って言えるだけの自信をつけたい」から「長居公園で毎日弾き語り修行をする」、と決意する展開だったわけだ。ここにすごい数の共感と称賛が集まって、ランキングは3位なのだけどコメント数はダントツの一位ということになっていたわけである。

「まさに主人公!」というコメントがかなりあったのだけど、確かにはとっちは「主人公力が高い」と思うのだけど、それはどういうものなんだろうといろいろ考えたのだが、どんな主人公にも共通していることというのは、ある意味での「精神力の強さ」なんだということに思い当たった。もちろん「ワンピース」や「鬼滅の刃」などのジャンプマンガにおける主人公はそのまんまの「精神力の強さ」を持っているわけだけど、「いい加減であることについての一貫性」を持っていたり、「依頼は必ず実行し、正体を暴こうとするものは必ず抹殺する」ゴルゴ13みたいな一貫性を持っているキャラクターもある。その精神性の弱さでどんどん状況が破綻していくというタイプの小説もあるが、ある意味弱さにおいて一貫する強さを持っている、みたいな感じとも言える。

幼年マンガや少年マンガでは主人公がその精神性の強さを獲得していくことがテーマになっている、つまりある意味でのビルドゥングスロマンになっていることもあるが、「ふつうの軽音部」のはとっちは、まず「修業する」と誰から言われたことでもなく自分で決意するところで「元々の強さ」を持っているわけで、そこは「生殺与奪の権を他人に握らせるな!」と義勇に一喝される「鬼滅の刃」の炭治郎とは違うわけである。そこに明瞭な主人公力が現れているわけで、まあそうなると「ふつう」ってなんだ、ということにもなるわけだけど、逆に言えば誰も知らないような「ふつうの人」でも誰にも気付かれないけれども「主人公力」を持って決断している人たちはいくらでもいる、ということでもあるかもしれないなとも思うし、ますますいろいろな意味でこの作品が気になってくるのだよなと思うのだった。

というわけで「ふつうの軽音部」についてちょっと熱く語ってみたりしました。


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