16.「清く正しくカワイく強い「大谷選手」」に対する「批判」とサウディとイランを国交回復させた「したたかな「中国」」(03/12 06:45)


< ページ移動: 1 2 3 >

3月12日(日)晴れ

昨日は3月11日、東日本大震災と福島原発事故からちょうど12年、一回り。一部のヒステリックな反原発感情をはじめ、精神面でも現実面でもまださまざまな傷跡が残ってはいるが、昨日は陸前高田出身・大船渡高校卒の佐々木投手がWBCの先発し勝利するなど、ある意味の鎮魂を忘れずにやっていくことは、この災害から切り離せない日本で生きることの意味を改めて考えさせられる。近世以降、戦乱の少ない日本において、「祖先の鎮魂」は「災害の犠牲者の魂を慰める」という意味もあるのだなと思う。

ワールドベースボールクラシックの日本ラウンドが始まり、大谷翔平選手らの活躍が続いている。昨日はチェコ代表のちょっと捻ったスタイルに始めは打ちあぐみ、エラーから先制を許すなどハラハラさせられたが、逆転したらもうこれは大丈夫だなと思い見るのをやめたのだが、案の定危なげなく勝利を収めたようだ。国際試合の怖さというのは相手の情報がないということで、しかも相手が野球が盛んでない国だと見ると楽勝ムードが漂ってしまうところだなと思う。そこで少しつまずくと急に勝たなければいけないというプレッシャーが強くなるわけで、チェコ代表の善戦のおかげでその辺り、兜の緒を締め直せたら良いだろうなと思う。

日本ではあまり注目されていないが、親米と言われがちなサウディアラビアと反米の急先鋒とも言えるイランが権威主義的で覇権主義的な姿勢が問題になっている中国の仲介によって国交を回復した。これは中東専門の池内恵さんがなかなか日本の要路ではそこが注目されないと嘆いていたが、考えてみたらある種の外交革命なわけで、その辺りのところは考えてみなければと思った。

中東といえば今まではロシアの影響力が強かったし、いまだにシリアを通じて影響力がないことはないが、やはりウクライナに侵攻し苦戦していることで中東外交全般への影響力の低下は否めない。ただロシアの原油禁輸の制裁によって産油国は主なプレイヤーだったロシアが表に出て来られなくなったこともあり、その利益を守るための体勢維持にかなり神経を使っている現状はあったのだろうと思う。

アメリカは西側の価値というか「のっぺりしたリベラリズム」を押し付けてくる国なので、親米と言われるサウディアラビアにおいてもいろいろ譲歩したりはしつつも基本的に「うるさい」と感じていることは間違いない。反米のイランはそこにこだわることはないし、中国もまた権威主義的な方向性を強めている。サウディアラビアは要は利益によって親米姿勢をとっているけれども、価値観においては共有はしていないわけである。

サウディアラビアがイランと敵対してきたのは、イランがシーア派のイスラム革命国家だからであり、「革命の輸出」を最も嫌っていたから、ということが大きいだろう。しかしイランも革命後40年以上経ち、イスラム革命体制そのものに異論が出てきている状態で、むしろ体制維持に神経を使うようになってきている。つまり、「現状を維持する」という利益においてサウディとイランは共有できるということになりつつあるということなのだと思う。

まだイランの融和姿勢を疑っているアメリカは、もちろんサウディとイランの国交回復に手を貸すような状況ではないし、ロシアもまたそんな余裕はない。トルコやインドにしても利益対立があるからそんなことに手を出せないが、一帯一路を唱え世界進出を図り、国内では権威主義的な体制を強化している中国からしたら、ここで両国に恩を売るのはまさに中国自身の利益であり、またサウディやイランにとっても中国の協力を全面に出すことでアメリカを牽制できるという利益もあるわけで、まさに「価値観と利益が共有できる」関係としてこういう外交が成り立ったのだろうと思う。

中国としては中東に進出するさらなる足掛かりとなるし、習近平独裁強化の危うさは感じさせるもののプーチンに比べれば失点は少ない。アメリカや西欧の「のっぺらリベラリズム」に反感を持つ国々の間に「価値観」を共有できる権威主義ネットワークのようなものを作ることは中国にとっても大きな利益であり、またそういう意味でロシアに対しても陰に陽に援助を続けていくことになるだろうと思う。

一見全く関係ないように見えるけれども、ネットではWBCで活躍する大谷選手に対して、小山(狂)さんや白饅頭さんが「清く正しく強くかっこいいネオティニー顔」だと批判し、ボクシングの亀田選手のような底辺から成り上がった不良みたいな魅力がない、ということを言って批判されていて、そのことにどういう意味があるのかと考えていたのだが、現在の世界情勢においていわば西側価値観から見れば「不良」の中国やイランが、「価値観を押し付けてくる恵まれた優等生」に対して存在感を誇示しているという構図と似ている、というか本質的に共通するものがあるなと思ったのである。


< ページ移動: 1 2 3 >
16/5049

コメント投稿
次の記事へ >
< 前の記事へ
一覧へ戻る

Powered by
MT4i v2.21