要はあまり注目されてない、見落とされている所に次の世界を変えてしまう大きなリスクが存在する可能性があるということだと思うが、実際のところロシアがウクライナに「本当に」侵攻し、ウクライナが敢闘して長期戦の様相を示す、などということは2022年の冒頭の時点で予測できた人はいないだろう。実際、このレポートの2022年版を見ると10位にロシアについて書いてあるけれども、ウクライナ再侵攻のリスクも指摘しつつ、それがなくても存在感が高まる、という話なわけで、ロシアは侵攻をちらつかせはするがしないだろうという雰囲気の記述である。これは多くの人が言っているが「ロシアにとって明らかにメリットよりデメリットの方が大きい」からなのだが、実際には侵攻は起こった。
だから今回はロシアに関して1・2・3・6・8番の全体の半分で触れられているが、それだけインパクトが大きいということではある。こうした政策提言がどれくらい政府の施策に反映されるのかは心許ないところはあるが、そこにおけるプレイヤーでない市民も、その辺りのところについて考えておく意味はないわけではないだろう。
また、これらの現状認識も自分の問題と感じる部分とは結構異なっているところもある。いわゆる「白人右翼」の伸長の問題や、フェミニズムやBLMなどの行き過ぎたリベラリズムがもたらす分断などについて、まあそういうのは国際的なリスクというのとは違うところで語られるのかもしれないが、これはTwitterでも書いたけれども現代の世界の国際政治学というものが基本的に第二次世界大戦後の国際秩序を前提として考えている、つまり世界的にはリベラル勢力のメンバーから見た分析になっているという部分もあるという認識は必要だと思う。
そういう意味では、「保守」を標榜する者からしたらこうした分析自体が「参考」というレベルのものだという認識は持っていた方がいい。これもTwitterに書いたが、自分が保守であるという認識のアイデンティティとして自分はリアリストであるという認識に根拠を持っている人が結構いるから、左翼リベラルと言ってもなんでも戦争反対みたいな化石左翼だけではなく、リベラルな世界認識からのリアルな分析をする人たちがいて、現在の国際政治学というのは日本においてもそちらの方が主流、つまりテレビでウクライナについて語るような人たちはそういう人たちなのだということは知っておかないといけないと思う。
だからこうした往復運動の中では特に「自分とはどういう人間か」「日本とはどういう国か」といったアイデンティティの問題が一つ大事になってくると思うし、それとともにそういう状況に対する感受性とか現状認識の落ち付け方、具体的な行動というものが出てくるわけで、そういうさまざまな面から学んでいきたいと思う一方で、読む方にも参考になるようなことを書いていけると良いなと思っている。
その他Twitterで書いたことなどについていろいろ反応があったのだけど、その辺りはまた書く機会があったら書きたい。