489.二月に読んだ本について振り返っていたらいつの間にか自分の性格について考えていた(04/27 19:57)


< ページ移動: 1 2 >

「今」の自分を知るために「今まで」の自分を振り返るという作業を続けているわけだけど、古い時代にだけ焦点を当てるのではなく、最近の自分にも焦点を当ててみようと思って、2月に読んだ本についてまとめてみることにした。

2月のブログを読み返して本に関するところをピックアップして、最初に気がついたのが買った(借りた)はいいけど読みかけで読まないままになってる本が多いということ。全部で10冊もあった。リストアップしてみると朝吹真理子『流跡』岡本綺堂『江戸情話集』植松二郎『一瞬で心が前向きになる賢者の言葉』和田秀樹『悩みグセをやめる九つの習慣』ビートたけし『教祖誕生』『日本は世界第五位の農業大国』『学術都市アレクサンドリア』倉橋由美子『聖少女』『リルケの文学世界』羽生善治『大局観』。小説が4冊ある。こう並べてみると方向性がばらばらで、つまり何かよくわからないけど行き詰っているものを感じていて、その突破口になるものをあれこれ探してみたのだけど、結局そっち方面では今はムリという感じになったんだなと思う。

結局小説で読んだのは一冊だけで、それが西村賢太「苦役列車」。この本を読むのもなんだか苦役だったのだけど、芥川賞作品は全部読むということを自分に課しているので何とかかんとか読み切ったという感じ。でもこの作品には何というか自分に共通するところやあるいは自分とはへえ違うなあというところがあって、そういう意味で参考になったり面白いなと思ったりしたところはある。こういう作品が書きたい、という意味での参考にはちょっとならない感じではあるけれども。

漫画で読んだのはヤマシタトモコ『ドントクライ、ガール』中村珍『羣青』野村宗弘『そういやの、カナ』の3本。しかしこれも考えてみると裸族の話とDV男を殺して逃走中のレズビアンのカップルの話、年の差離れた夫婦の若い嫁さんに食わせてもらっている職なし男の話、と考えてみたら現代のどろどろを掬い取ったような作品ばかりだった。ギャグだったりほのぼのだったりもするのだけど、その背景にあるのはそういう現代のある意味での重苦しさだったりするわけで、そういう意味では「苦役列車」と同じ系列だと言えなくもない。

新書で読んだ山岡拓『欲しがらない若者たち』もそういう現代の若者の特性を描いてはいるのだが、ちょっと表面的に流れている観があったのだけど、数日前に読んだ佐々木俊尚『キュレーションの時代』のビオトープ(小生態系)の考え方を導入して考えてみると結構腑に落ちるところが多かったりもする。何というかつまり、無意識のうちになのか、現代という時代を何とか理解しようという感じが自分の中にあるんだなと思う。あんまりよくわかってないなという感じが自分にあるからなんだけど。多分こういうことって自分にとっては苦手な方面なので、無意識に心を開かないようにしているところもあるのかもしれない。舟板一枚下は地獄というか、何というかあの津波にやられた街の写真の印象がこれらの作品と重なってきて、何だずいぶん前から現代という時代は被災しているんだなという気がした。何かそのくらいピンボケなところが自分にはあるなと思う。実際こういう本もわっかんねえなあとぶつぶつ言いながら読んでいる感じがある。

そういう中で、自分が読んで元気が出るというか、こういうふうにやりたいなあと思わせるのが宮崎駿関連の二冊。宮崎駿『風の帰る場所』酒井信『最後の国民作家 宮崎駿』。宮崎のように現代という時代をスパッと切れるほど自分がこの時代をちゃんと認識できているかと思うのだが、作家というのは別に認識しなければいけないというものではなくて、認識という理性的な働きとは少し違う、ここを押さえたらよくなる的なものをつかんで表現する方が大事なわけで、そういうものがつかめたらいいなと思う。宮崎の本の中に出てきたフィリパ・ピアス『真夜中のパーティー』というイギリスの児童文学の短編集は全部は読んではいないのだけど、でもこの感じは悪くないなと思った。やっぱりわくわく感のあるものはいいなあと思う。

アートに関する本では、何かのきっかけで四谷シモンのことを思い出して『人形作家』という本を読み、面白かったのでそれに関連してベルメールかバルテュスを読もう(見よう)と思って物色して、結局バルテュスにちょっとはまった。節子夫人による『バルテュスの優雅な生活』バルテュス画の『ミツ バルテュスによる40枚の絵』、英語の概説書『Barthus』の3冊。こういう感じの超時代的なアプローチが本当は時代を最も照射するのかもしれないとも思う。バルテュスの絵が面白いのは絵自体が物語的というより演劇的だからだなと思う。どれも舞台芸術の一場面を見ているようだ。それがどれもある種の悪夢のような場面であり、しかしそこに永遠性がある。見れば見るほどひきつけられて行くものがある。バルテュスはまだ読みかけの本があるのでまた読みたいと思う。


< ページ移動: 1 2 >
489/1600

コメント投稿
次の記事へ >
< 前の記事へ
一覧へ戻る

Powered by
MT4i v2.21